読書雑感

このコラムは、企業経営者、団体のリーダーなどの方々にご登場をいただき、読書を基本軸に仕事や生活、文化、芸術、経済、哲学、を語って頂くコラムです。
(株)コスモメディア専務取締役・相内さんの「雑誌が教えてくれた“考えること”の楽しさ」に続く、第8回の今回は、観客動員数1万人を超え、今や道内の超・人気劇団となった劇団イナダ組の代表を務めるイナダさんの登場です。随所に筆者のこだわりや鋭い視点がちりばめられています。
何気ない言葉の中にある優しく熱い思いが、読者の皆さんの日常をもう一度考えてみるきっかけになるような気がします。5月11日からの公演「タンバリンマン」を前にきわめて多忙な中、原稿を書いてくれました。ありがとうイナダさん。

■第8回 劇団イナダ組イナダ的雑感 筆者:イナダさん

劇団イナダ組  代表 イナダさん 札幌を拠点に劇団を主催している。芝居など興味がない人には、劇団といってもピンとこないだろう。だいたい芝居なんぞ見た事が無い人がほとんどなんだから仕方のない事だと思う。そんなマイナ−な事をこりずに12年もやっている。年に2、3本は公演しているのでどこかで『劇団イナダ組』と見かけたら気にとめてくれると有り難い。

 そこで全ての脚本と演出をしている。今まで30本ぐらいの脚本を書き公演をした。
12年間で30本は多いのか少ないのか分からないが、何となく芝居を初め何となく脚本を書き続け今はコレが仕事になった。誰にも芝居作りや演出の仕方を教わらなかった。
無論脚本も書き方を教わってはいない。本当に何となく初めただけで、今じゃ偉そうに作・演出家という肩書きで仕事までやっている。そしてこんな文章まで書いている。
いいかげんと言えば、いいかげんな商売である。

 もともとはグラフィックのデザイナ−だったのでコピーライタ−的な事もしていた。だからある程度の文章は書いていた。しかし、まさか脚本を書いたりコラムを書くなど、“物書き”になるとは夢にも思わなかった。はっきり言って学生の時国語の通知表2だったんだから。今でも漢字は書けないし、句読点をどう入れるかよく分からない。
たぶん脚本は書けるが小説は書けないだろう。本当に文章能力無いんですわ。ではどうして脚本など書けるのか。それは、私の脚本はただ喋っている会話を書いているだけだから。友達同士で話している面白い会話を繋げ、物語を構成しているだけなのです。文章に長けてる人は、文章、文章していて会話としてあんまり面白くなかったりすることも多い。
ある意味、脚本なんかは誰でも書けるんです。ある程度までは、芝居は脚本力より構成力だったりする。後は慣れだと思うから、頑張れば誰でも脚本の1本ぐらいは書けるようになります。

 後はやっぱり本を読むこと。本を読むといっても文章力を高めるってことじゃない。情報を得るということ。だから本だけじゃなくマンガ、雑誌、映画、テレビ、ラジオ、ネットetc、あらゆる媒体から情報を仕入れることが大切だと思う。今、私は44歳である。44歳だからといって44歳の視点から全て物を書いてもしょうがない。自分の芝居を見にくるお客さんは15歳ぐらいから30歳までの女性がほとんどである。この年齢層に見合った物を書かなければだめなのだ。年寄りの説教みたいな事をやっていても誰も受け入れてはくれない。現在これらの人々は何を感じ、何を不満に思っているか。同時代性を考えていかなければならない。芝居作りは芸術活動じゃない。ある意味ただの見せ物商売であると私は思う。自分かってな自己満足・マスターベーションをやっていてもしょうがない。「何をどうやるか」、「何をどう見せるか」なのです。そのためにも情報は不可欠であり、そしてマーケティングが必要なのです。そう言う事を考えてモノを作ると取りあえずは何とか形になると思う。

 文章を書く上で一つこだわりがある。作品が言葉になる物は手書きをする。作品が文字になる物はワ−プロを使う。だからこの文章は文字を読んでもらうのだからワ−プロで打っている。作品が言葉になる物とは、芝居の脚本がそうである。なぜ手書きにこだわるかと言うと、前にも書いたが、芝居の脚本はあくまでも話し言葉だからである。
ワ−プロ打ちで活字になるとどうしても文章っぽくなる。句読点がきちんとしてしまう。人は無意識に、句読点があるとそこでブレスをしてしまう。それが嫌なのだ。そして喋り言葉はちゃんとしていない。文章では「そうしたら」と書くが喋り言葉では「そしたら」となる。読む時にどうにでもなると思われるが、微妙だけどそういうのがイヤだったりもしている。意地になっているとこもあるが、手書きにこだわっている。

 思うに、手で文章を書くことが少なくなった。みんなワ−プロやパソコンを使う。手紙もメールに変わった。便利になったとも思う。芝居に必要な資料なんかも本で調べるよりネットで検索した方は早いし便利。しかし便利がすべて良いって訳じゃないと思う。
パソコン画面を見るより、本をめくって読んだ方が頭に入ると思う。パソコンで打つより、手で書いた方が漢字なんかも覚える。今じゃネットで小説も読めたりするが、パソコンの画面で読む小説なんか味気ない。携帯電話は今じゃ便利で優れ物の代表だが、おかまい無しにどこいっても掛かってくる。いつも追い回されているみたい、なところがある。

 メールの普及で若者のコミュニケーションもおかしくなっている気もする。飛行機や新幹線なんかは早くていいが、早く着く分より多くの仕事をしなければならないビジネスマンもいっぱいいると思う。便利が不便利を生みだしている気がする。今の世の中どんどんデジタル化している。そのせいで休む暇もなくすごいスピードでなんでも進む。それはそれでいいが、できればのんびり腰を落ち着かせアナログタイプでいきたいところもある。ゆっくり本を読んだり、誰かに手紙を書いたり。そんな事をする機会が少なくなっている。会社に入ると、仕事と生活に追われるようになる。

せめて学生の時ぐらい、のんびり物を考える時間を作るべきだと思う。
2005年4月24日脱稿

劇団イナダ組 URLはこちらです。どうぞアクセスして見てください。
http://www.inadagumi.net/


■筆者プロフィール
イナダさん(本名 稲田 博)
[ 1960年生まれ 劇団イナダ組代表 脚本・演出家 ]
92年劇団イナダ組旗揚げ。
今まで札幌、各都市で公演。公演回数は30回をこえる
全作品の作、演出をこなす。テレビで活躍中のチ−ム・ナックス大泉洋、森崎博之らが所属し、1万人をこえる動員数を誇る。
北海道一客を呼べる劇団といわれている。
劇団員 役者14名 スタップ15名
演劇活動の他に、新聞、雑誌等でコラム担当。
ラジオパーソナリティや講演会なども行っている。
他に企業のイベントの企画や演出もする。
また、道内各地での公演や演劇ワークショップも勢力的に行っている。

劇作家協会会員。
浅井学園舞台芸術学科非常勤講師。
北海道東海大学非常勤講師。

2002年: 8月から日刊スポーツ誌で『イナダのはわらた』コラムを担当
2003年: 日刊スポーツ誌で『日本ハムファイターズ』のコラムを担当
2003年: 10月から半年間 STVラジオにて『ラジオイナダ組』を放送
1999年: 札幌FMアップルにて『イナダさん的ラジオ』を放送。現在継続中。
2004年: 11月から 日刊スポーツ誌『イナダのはわらた2』を連載中

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