読書雑感

このコラムは、企業経営者、団体のリーダーなどの方々にご登場をいただき、読書を基本軸に仕事や生活、文化、芸術、経済、哲学、を語って頂くコラムです。
池上学院学院長・池上公介さんに続く、第10回目の今回は、現在、成年後見法の周知と啓蒙に力を尽くされている生活設計アドバイザー小沼肇子さんの胸のすくような積極的な生き方をお届けしております。
50才過ぎて再度大学の門をたたき、悪戦苦闘をしながらも前向きな考え方と積極的な行動力で、見事なまでの生き方を続けて来られております。
周りから見れば少々こっけいなまでのその姿は、どれだけ真剣かを映す別の姿でもあります。さあ3回連続シリーズの第2回目。どんな展開になっていくのでしょうか!?どうぞお楽しみください。

■第10回 <3回シリーズ・その2>
「人生を読む!?」
読めないから面白いのが人生
そして、「読めば」人生が面白くなる!?

生活設計アドバイザー  小沼肇子さん4. 女神たち

 登校初日にバス停で、暑さの為に貧血をおこして倒れた私を救ってくれたのは、通学仲間となる友人だった。決して軽くはない体を引きずるように車中に乗り込ませてくれた。車中には、松葉杖の美少女が先客で鎮座しており、運転しているのは、私と同年配とおぼしき女性。大学から、少女を送ることを条件に、車の乗り入れ許可を受けての、車通学であった。彼女自身も、学生であった。冷房の利いた車内で、ほどなく息を吹き返した私の目に、二人は、女神のように見えた。そして、その車の前を、オ-トバイにまたがった三人目の女神が先導しているではないか!
 こうして、猛暑の八王子での1ヶ月に及ぶスク-リングが始まった。入れ違いの娘は、札幌で涼しい顔!母はリュックに帽子、日傘をさし、両わきに保冷剤をはさんで、しずしずと、大学への坂道を登る。初日の失敗から、呼吸法を会得したのだ。大口あけて、ハア、ハアは熱い空気がいきなり肺に入って呼吸困難に陥る。零下20度の帯広を歩くときと同じ原理の、逆バ-ジョンだ。(北海道人なら、ご理解いただけるだろう)
 ところで女神たちだが、それぞれに、人生をかかえており、この教室に着席するまでを語れば、それぞれに、一編の小説ができあがろうというものだ。それは、ほぼ同年代が学友となる一般の大学と違うところで、まさしく人生の縮図、ワケありのるつぼ!!
 紙幅が許されるなら、女神の全てを書きたいところだが、後の機会に譲ろう。しかし、彼女たちとの交友は今も互いの家を訪ねあう、無二の親友として、続いている。松葉杖の美少女は結婚して、この春、ハンデイを乗り越えて、そっくりな女の子を出産した。運転手役の彼女は、特許出願に意欲を燃やす将来の大金持ち候補だ。オ-トバイの女神は、卒業と同時に人材派遣業をたちあげて、二十代で社長だ。だから私は交友関係は大切にすることにしている。 
 わずかに開かれるスク-リング中の講座は、直接講義を受けられる貴重な機会である。まさしく、値千金。「これこれ、金髪を机に散らして居眠りするボク、もったいないこと、するでね〜。社会にでたら、誰も、手取り足取り教えちゃくれないよ!」おばさんは、心の中で叫ぶのだ。でも、若いモンは、常に眠い。それもわかる。
 こちらは、試験勉強は、その日の早朝と決めている。昔は試験勉強といえば深夜だった。年齢とともに、なぜか早起きになっている。数日前から勉強しても、当日まで記憶がもたない。この相関関係から、編み出した受験勉強方法である。せっかくの早朝勉強の成果がこぼれ落ちないように、おばさんは、大学への道をしずしずと歩く。

5. 「イシンダ!」

 スク-リングは東京だけでなく、日本全国で開催される。「値千金」の講義を追って、私も全国を旅した。新潟、沖縄、名古屋・・旅といっても、講義と試験、その前後でほぼ一週間単位でその土地に滞在する。学生だから質素はなにも恥ずかしくはない。見知らぬ土地の粗末なホテルから、会場となる専門学校などに、リュックを背負ってバスで行く。バス停で道を訊ねると、その土地の人を知ることになる。(私はバス停に縁のある女だ!) 新潟では、道を訊ねただけの方から、街中の案内をしてもらった上に、「その年で勉強する姿勢に感動した!」と、札幌に帰り着いた私より先に「笹だんご」が届けられていた。この年配の新潟の女(ひと)の温かさが忘れられず、この度の地震も、我が事のように心配でならなかった。
 沖縄では、基地に通勤する人々とバスで隣り合せ、降車してゆく「象の檻」の実物の大きさに、声を失った。私が降りる琉球法律学院近くの停留所、「石下(いしした)まで」というと、バス中が、「イシンダ!」と叫び、明るい笑い声がかぶさった。基地の街に、伸びやかな南国の笑顔があった。
 名古屋の中京法律専門学校前の徳川美術館は、学生証で100円で入場できた!観光旅行では決して味わえない体験の連続であった。かくして、さまざまな出会い、驚天動地のエピソ-ドをちりばめた大学生活は卒論までこぎつけた。

6. 誰も知らない?

 さて、その「卒論」だが、ここで、テ-マの選択は生死を分ける。こねくり回された、ではなく、十分に研究し尽くされた論題は、専門家も多く、諸説あり、自分らしさを主張するには、よほどの力量が必要になる。
 そこは年の効だ。だてに2度目の大学じゃない。社会人としての感覚がここに働く。とにかく、2年に編入した私には3年間で卒業しなきゃならない理由がある。娘が卒業しちゃうのだ!何としても、一緒に卒業しなければ、来年にはこのマンションは使えない!ゆえに、卒論をしくじるわけにはいかないのだ。
 そこで、しくじらないテ-マを選ぶことにした。それが、新しくできる法律、正しくは、2000年4月施行の「成年後見法」。まだ、この法律の実効性については手探り段階で、早い話が、やってみなきゃ問題点は誰にもわからない。勿論この時にはまだ、法制審議会での審議段階であり、ほとんど、誰も知らない?
 これなら、自由に自論を展開できる。世慣れたおばさんはこう踏んだわけだ。まして、この法律は家庭裁判所が扱うわけだから、自分が調停委員として関与する場合を想定すれば、国民の司法参加の時代、結構いけるんじゃないか?ここまで考えればあとは走り出すのみ。中年女性の厚顔、いえ、積極性をいかんなく発揮して、顔見知りの家裁の裁判官に、意見をもとめ、最後には、卒論本体の添削までしてもらって、「良質な後見人の確保が、この法の実効性には欠くべからざる要件である」との論を展開。詳細は別の機会に譲るが、結構イケてる内容になったと思う。
 卒論の口頭試問では、「現場の裁判官の指導のもとに、調停委員が書いた新しい法律への提言」(大げさだが!)ということで、試験官の教授は、合格点をくれたのだった。 1998年3月、法の施行前に、無事卒業となった。入学の動機が不純なら、卒論のテ-マ選びも、立派とはいえない。しかし、どうだろう?人生とは面白い。窮余の一策で、選んだテ-マが、今や私のライフ・ワ-クになろうとしている。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まだまだ、次回につづく。
2005年6月11日 脱稿

<成年後見法を考える>
生活設計アドバイザ-小沼肇子事務所のホ-ムペ-ジをご覧下さい。
アドレスは http://www.rak3.jp/home/user/0316/


■筆者プロフィール
小沼 肇子( こぬま けいこ )さん [ 生活設計アドバイザ- ]
昭和21年生まれ。 札幌市立旭ケ丘高校卒業。 藤女子短期大学 国文科卒業
中央大学 法学部卒業。 北海道銀行、北海道ロ-ン保証(株)勤務。
北海道新聞「朝の食卓」執筆。 ラジオ・テレビのコメンテ-タ-など。
前北海道文化放送番組審議委員長。

■現在
生活設計アドバイザ-小沼肇子事務所 主宰
生活相談を受付けるかたわら、講演を中心に活動
講演
「小沼肇子の再出発講座」「再学問ノススメ」「成年後見法」
「北海道の 女性たち」「メデイア・リテラシ-」「中高年の生き方」
「あなたも講師になれる」」「家庭生活の知恵」「北海道農業者の魅力」
他多数

■公職
・札幌家庭裁判所家事調停委員 
・人権擁護委員

■現在の関心事
「札幌後見支援の会」理事として、成年後見法の研究と実践に、力を注ぐ。「日本成年後見法学会」所属
健康・生きがいづくりアドバイザ-(厚生労働省外郭団体認定資格)として、中高年の生き方をサポ-ト FM放送でも活動

■趣味
・水彩画。「新道展」10年連続出品
・海外旅行。画材を求めて世界20数カ国を旅行
・写真。二人の孫を写すのが何よりの楽しみ。

上へ移動↑