読書雑感

このコラムは、企業経営者、団体のリーダーなどの方々にご登場をいただき、読書を基本軸に仕事や生活、文化、芸術、経済、哲学、を語って頂くコラムです。生活設計アドバイザー小沼肇子さんの胸のすくような積極的な生き方に続く今回第11回目は、大崎陽一さんの「偶然性の迷路から」をお届けいたします。失意をバネに、発想の転換に、多面的思考へと自己を変革しその都度すっくと立ち上がってきた筆者の静かなエネルギーに心うたれます。
(株)東急エージェンシー北海道支社長を務める筆者大崎さんは、ストレスの多い生きにくいこの時代に「プランナーの視点」から発想し、生き甲斐につながる過ごし方を問いかけます。その極意とは?後編をどうぞお楽しみ下さい!
そして、次回はNPO法人「札幌ビズカフェ」事務総長の湯谷偉男さんです。
■第11回 偶然性の迷路から(後編)

(株)東急エージェンシー北海道支社長 大崎 陽一さんプランナーの目

 本によって学び教えられることは多い。何かのアイデアを出そうとするときは特に多くのヒントに満ちている。プランニングする時、普遍性や先見性というものが大切だといわれている。
だが、それらの意味するところはあらゆる諸現象には共通の要素があるということであり、人間は所詮動物という生物学的存在であり、超えがたい限界を抱えているということに尽きると思う。最もかっこいいと思われることは、かっこ悪いこととどうも似ているのである。実は、戦争の学問である軍事学でも戦線突破と包囲撃滅の型は同じなのである。

 学生時代最も影響を受けた作家にジョルジュ・バタイユがいる。まっすぐと天に向かって伸びる大きな樹はその地下に同じように大きく醜い根が地中を這い回っており養分を吸い取っている。梶井基次郎の桜のような美しくも怪しい光と闇のこの二面性。今、世界で起きている政治や経済、経営、軍事等のあらゆる諸現象の根底は実は右脳的なる愛や性といった人間存在の超えがたい限界を内包していると見る彼の哲学は、難解ではあるが、私には極めて教示的、神秘的に思えたのだった。

 GDPや消費指数、株価で世界が動いている、このクソ忌々しい耐え難い現実もコインの裏表のように人間存在の闇というダークサイド(?)を持つということなのでしょう。

 さて、マス・メデイアと一体関係にある広告界も、自己存在の巨大さと影響力の中で、逆に哲学や倫理観を見失っているように思える。そして、大衆と経済優先という世界観の中へ埋没していく恐怖に対し、「疑惑(doubt)」こそこの時代を見る視点でありキーワードではないのかと思い始めている。そしてこの、ニヒルなブラックホールこそが真実を明らかにし嘘をあばき、逆に世界を救う毒というべきものかもしれないのだ。だからこそ、情報は公開されなければならないし疑わなければならない。情報のスピード化とマルチ化の進行する世界でそれはコインの裏と表の関係になるはず。

 プランニングについても同じようなことが言える。川上から川下へのマス的で一方的な流れではなく360度の視野と複数の切り口を持つことが要求される時代に突入している。
何気なく廃棄され見捨てられたアイデアは多い。だが一見無理無駄に見える多面的な思考こそがあらゆる想像力と可能性を創出する原動力であることを決して忘れてはいけないのである。そこでこそ、本の中にある何千何万という思考の宝石や情報の果実が自由自在に組み合わされて、時代を撃つ感動の一皿になるのだ。
 多面性はプランニングする時の本当に重要なポイントに違いない。簡単な例でいえば、360度思考とは、他人の目線になることは勿論、ちょっと位置を変えて犬の目や鷹の目になって見ることを意味する。ほら、かならずやいろいろなものが見えて来る。見え方が違うのだ。実は世の中はヒント!ヒント!ヒントだらけなのだ。本の中に、街角の中に。もしあなたが心から求めるのなら。

 最後に、又「偶然」に戻るが、いろいろ述べて来たのですでにお解かりだと思いますが、失敗や失意といった偶然は見方を変えると「大きな喜びの萌芽」である。失敗や失意が大きいほど歓びの樹はぐんぐんと大きく天に向かって育つ。つまり偶然はその変化の中に無という毒を抱え込むことによって、力強い自身の運命となっていくように思える。迷路のような時代だからこそ立ち止まらず駆けてみましょう。

 ワインの本ばかり読んでいても一生ソムリエになれない。いいワインかどうかは飲んでみなければわからない。そして、まずいワインを飲んでいる暇など無い。人生は短いのだから〜。
 最後までお付き合い頂いた読者の皆さんにとってこの時間が「幸福な偶然」であることを願って、私はワインの栓を空けることにしましょう。では、皆さんと私に、乾杯!
2005年10月30日 脱稿

筆者の勤め先URLはこちら
http://www.tokyu-agc.co.jp/index2.html

■筆者プロフィール
大崎 陽一さん [(株)東急エージェンシー北海道支社長]
■略歴
1949年 北海道札幌市に生まれる
1968年 北海道立札幌北高等学校卒業
1973年 日本大学法学部新聞学科卒業
1973年 (株)新生広告社 入社
1974年 (株)協同広告社 入社
1978年 日本広告業協会JAAA懸賞論文入賞
1979年 (株)東急エージェンシー 入社
主にイトーヨーカドー、ヨークマツザカヤ、ホーマック等
チェーンストアを中心に企画・営業職を歴任
2003年 (株)東急エージェンシー 北海道支社長
※現在に至る
(社)北海道広告業協会 理事 業務委員会委員長
全北海道広告協会 理事 表現研究委員会委員長

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