読書雑感

このコラムは、企業経営者、団体のリーダーなどの方々にご登場をいただき、読書を基本軸に仕事や生活、文化、芸術、経済、哲学、を語って頂くコラムです。
第20回の今回は、昨年プロ野球パリーグを制し、つづく日本シリーズを破竹の勢いで見事勝ち取った日本ハムファイターズの本拠地、札幌ドームの代表取締役社長瀬戸武さんにエッセイを寄せて頂きました。高校時代甲子園を目指した筆者は、その後社会人生活でもさまざまな体験の中から多くの生きていく意義と失敗を恐れない生き方を貫いてきました。今では、札幌、北海道のシンボルともなった札幌ドーム。これからもっともっと愛され、親しまれる札幌ドームの創造に向けて、スタッフ全員とともに一丸となって邁進する姿が伝わってきます。黙々と失敗を恐れずに前進する筆者と裏方のスタッフの仕事から、きっと読者のみなさんは何かを感じとって頂けることと思います。

■第20回 「スポーツで得た経験が、人生を深くする」 筆者:瀬戸 武さん

株式会社札幌ドーム 代表取締役社長 瀬戸 武

人は、弱いからこそ努力する

スポーツは、感動を与えるが、絶望や失望も与えると、私は思う。そこに節度と人のつらさを哀れむ心や痛ましく思う「憶測の情」がなければスポーツは成り立たない。それは一般社会でも同じだと思うが、これが今の世の中には欠けている気がする。最近、大相撲で問題になっている朝青龍の謹慎処分であるが、問題が起きるまでは見て見ぬふりをしておいて、何か問題が起こると、みんなで一斉に攻撃する。たしかに朝青龍の行動は批判されると思うが、そこには憎悪が見え隠れし精神的にも肉体的にも追い詰めるやり方はおかしいと思う。人間と言うのは華やかな反面、淋しい部分や弱い部分がある。だからこそスポーツを通じて努力する。精神的にも弱い人間だからこそ、人より努力して強くなろうとするのではないだろうか。

私も高校時代、野球に夢中になっていた。その中で今でも忘れられない思い出がある。

全道大会の準決勝でツーアウト満塁という場面。結果は三振をして試合には負けてしまい甲子園への道は終わってしまったのである。その時の悔しさは今でも夢に出てくるほどだが、人間は挫折を味わうと強くなる。試合や勝負には必ず勝つということは有り得ないからこそ、悔しさをバネにすることが大切だ。私が野球で得た経験はその後の人生にしっかりと生かしているつもりだ。

感動を発信できる札幌ドームに

人間は人生に何度か青天の霹靂を味わうというが、札幌ドームの社長就任の話は、私が経験した中でも本当の青天の霹靂といえる。私は国鉄、JR、JRグループと通年で50年近く仕事をしてきたが、民間で培ってきた経験をこの会社で幅広く広め導入したいと日々努力をしているところだ。それは、お客様の目線に立ち、お客様が何を求めているかということを常に考え、お客様に事故やケガのないよう安全、安心な施設とすることだ。おかげさまで昨年は来場者数4万3千人という日が何度かあり、プロ野球日本シリーズは満員となった。私が昨年6月に札幌ドームに来てから、プレーオフ、日本シリーズなど31試合が行われたが、27勝4敗という素晴らしい勝率だった。

私が就任してからは、日本ハムが11連勝という奇跡に近い結果を出したこともあり、それが優勝の原動力となったと思う。これは、日本ハムの選手がヒルマン監督を中心に頑張った見事な結果に他ならない。選手たちは何事にも弱音を吐かず常に「できないことはない」という強い姿勢を持っていたからこそ、あの奇跡の連勝があったのだ。

私たち札幌ドームは常に裏方に徹して、日本ハムの選手、コンサドーレ札幌の選手が気持ちよく安心して試合が出来る環境を提供し、そしてドームで試合をすると必ず勝つんだというムードを作ることが仕事だと思って頑張っている。ナイターがある時は試合が終わると夜10時から11時となり、その後始末をするわけだから裏方の仕事は大変だ。グランドキーパーはグランド整備に神経を使う仕事だが、6回表にはグランドならしを行いながらチアガールと一緒に踊ることも一つのサービスとして昨年から始めた。スタッフはお客様に楽しんでもらうために色々考え一生懸命なのだ。

試合が終わって帰宅するのは午前2時、3時。見えない部分のさまざまな努力がお客様を喜ばせることにつながるのではないだろうか。札幌ドームは、感動を発信できる場所、感動を与えることの出来る場所になりたいと日々思っている。

さまざまなことにチャレンジを

昨年15万人の観衆の中で日本ハムの優勝パレードができたことは、市民、道民にとって感動を味わいそして非常に心強く感じたことだったと思う。みなさんを元気づけ、明るい話題を提供したのは事実だろう。しかし札幌ドームで行われているのは日本ハムの試合ばかりではない。コンサドーレの試合、コンサートやさまざまなイベント、就職セミナーなども行っているが、もっともっと多方面で利用していただきたいと思っている。

今年2月に開催されたノルディック世界選手権大会では、ドーム中に雪を運び大会会場に作り上げた。これは過去にない試みで日本はもちろん、海外からも注目を集めた。これからも多くのことに果敢にチャレンジをしたいと思うし「札幌ドームここにあり」という気概と存在感をアピールしていきたい。

ところで、知り合いの青年が今、アフリカのウガンダで少年たちに野球を教えている。

日本からグラブやボールなど用具を持ち込み、部室の整理整頓、掃除、グランドの整備など野球を始める姿勢から指導した。ある時、彼が駒大苫小牧高校の甲子園大会のビデオを見せると「ぜひ僕達も駒大苫小牧高校と試合がしたい」という声が上がり、さまざまな準備を経て2008年1月に札幌ドームで試合をする予定まで進んだ。野球に取り組むアフリカウガンダの少年たちのひたむきで真摯な姿勢をみなさんに見ていただきたい。そして野球というスポーツが国境を越え世界とつなぐ絆をぜひ感じて欲しいと思う。

これからもスタッフと共にチャレンジ精神を常に持って、新しい発想でみんなに愛される札幌ドームにしていこうと思っている。

2007年8月20日脱稿

札幌ドーム http://www.sapporo-dome.co.jp/

■筆者プロフィール
瀬戸 武さん [(株)札幌ドーム 代表取締役社長]
平成18年:(株)札幌ドーム 代表取締役社長
平成8年:札幌駅地下街開発(株) 代表取締役社長
平成6年:札幌駅地下街開発(株) 代表取締役専務
平成2年:北海道旅客鉄道(株) 取締役釧路支社長
昭和59年:同・釧路鉄道管理局 総務部 人事課長
昭和33年:日本国有鉄道入社

上へ移動↑