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中宮さんのビタミン・エッセイ新シリーズが始まりました。中宮さんはIT企業の代表取締役会長を努めつい最近相談役に就任したばかりです。長年リーダーシップを発揮され、混迷の時代を乗り越えてきました。今、経営の一線から退かれ、趣味のひとつであるスキューバダイビングと沖縄の海をこよなく愛し、自然と人間の関わりそしてご自身との関係を改めて考えてみたいと思っています。新シリーズ「海と世界と人間と」は、皆さんと共に“自然とご自身を考える旅”のエッセーとして、どうぞお楽しみください。

海と世界と人間と

■1.トライアスロンの島 あるチャレンジャーの軌跡(3)

(株)ジュリアジャパン 相談役 中宮 希史

私が飛行機やフェリーの乗り継ぎ以外で、石垣島を訪れたのは6年ぶりの事です。私はチーム勝山と合流してから帰る当日まで、チームのメンバーと行動を共にしました。その夜はチーム勝山の健闘を祈り居酒屋で泡盛とサンピン茶で乾杯し、沖縄料理に舌鼓を打ちました。競技前日の4月24日、勝山と小田はトライアスロンの受付登録と競技説明会で会場に赴き、所定の手続きをしている間に2人以外の応援団は、武富島周辺や石垣南部でダイビングを楽しみました。普段から北国の冷たい海で潜っている我々にとって、沖縄の海は温かくカラフルな魚や海ガメに囲まれた時などは、竜宮城に迷い込んだのではと錯覚するほど、鮮やかで華麗なる水中マジックに引き込まれてしまうのです。

しかし私もその後、日本の海ばかりでなく世界の名だたるポイントにも足を運び、ご当地でしか体験出来ない貴重な経験を積んで来ました。ダイビングばかりでなくその地方特有の文化にも触れ、その度にカルチャーショックを受ける事も一度や二度ではありませんでした。勿論良い事ばかりでなく、ローカルと呼ばれる土地の住民に対する偏見や、宗教の違いによる価値観の相違なども見えてくるもので、国内では知らなくて済まされた事でも、海外では通用しない事もままある事です。

一方グローバリゼーションの時代と呼ばれて幾久しいと思いますが、国際化とは何を意味するのか、これを理解するには多方面に渡っての知識と経験がなければ、到底理解出来るとも思えません。ですが国際化の波が多国に及ぼす影響は、必ずしも経済の発展や平和をもたらす特効薬に成りえるとは私には考えにくいのです。何故ならば国際化を推し進める原動力の多くは、先進国による経済侵略が核にあるからだと思うからです。

それは今に始まった事ではなく、古の時代から繰り返される人類最大のエゴが生み出した戦争という怪物と、ある意味で大差無いと判断されるからです。例えその結果として国同士の交流が盛んになり、双方に物が溢れるほど流通し、それを消費する文化が裕福な暮らしを支えているのだ、などと考えるのは、余りにも人間として未熟ではないかと思われるのです。

話が脱線してしまいましたが、常識の有る人間であれば誰でも平和を維持したいと考えるものですが、本来人間には闘争本能が備わっているのです。それは生命として持って生まれた宿命と合致するものであり、種の保存にも関わる重大な要素でもあります。

又、闘争本能は国際社会の中では誰にでも平等では無く、優れた種を残すための最大公約数として働くナショナリズム的性格が顕著になる事にも留意すべきでしょう。

その好例として、4年ごとに開かれるスポーツの祭典オリンピックを上げる事が出来るのではないでしょうか。国民の大多数は、母国の活躍を信じて選手に最大の声援を送る事でしょう。ところが、ここでオリンピックの冠を外してしまえば、国民の大多数は、母国の戦勝を信じて軍隊に最大の声援を送る。と捉えても可笑しくないほど共通項があるのです。

双方とも「闘い」と「戦い」の違いこそあれ、相手を負かせる行為であり相手に自分の強さを見せつける事には違いないのです。ですがオリンピックでは勝った相手の強さは認めるが、その相手をライバルとして尊敬こそすれ、憎んだり傷つけたりは普通しないものです。むしろ戦った相手を祝福する事が美徳ともなりえる訳です。オリンピックは戦争の代りに人間の闘争心を満足させ、勝利の美酒に酔う国民的娯楽として成功した唯一の例であると考えられます。これは正に人間の英知がもたらした偉業であるといえるでしょう。

オリンピック競技の中でもトライアスロンは、その過酷さに於いて並ぶものは無いといわれていますが、今回石垣島で併設されるワールドカップも、オリンピックに負けない激しいバトルが期待されています。石垣の目抜き通りを歩いていると、明らかにトライアスリートと分る金髪の男女が,颯爽と歩いているのを見かけます。何れも手足が長く一見スリムに見えるシルエットの中には、鍛え抜かれた強靭な肉体が宿っているのです。その他にもバイクで汗を流すアスリートも多く、流石にワールドカップだけあって国際色豊かで華やかな香りが、バイクの風切り音と共に石垣島を駈け廻っているようでした。

チーム勝山も無事エントリーを済ませ、一日の締めくくりはやはり居酒屋での乾杯から始まります。今回応援に参加したスタッフはMさん、ドラミちゃんにQちゃんの頼もしきお嬢様やお姉様でした。何れもチーム勝山を支える力持ちで、ダイビングではいつもお世話になる素敵な仲間達です。皆さん酒好きですが翌日の競技に備え、早めに宴会を切り上げて眠りに付きました。

大会当日の朝、心配された天気も上々で気温24度、湿度55%、風速6.9mのコンディションの中で開催されました。「石垣島トライアスロン2010」は、エイジ572名、シチズン581名、リレー127組(381)が出場しました。完走率は何れも100%に近く、出場された何れの選手も、この日に備えてしっかりとトレーニングしてきた事が窺えます。

勝山はエイジクラスでエントリーしています。特に水泳を得意とし、持ちタイム順でトップグループからのスタートとなりました。残念なのは前日から勝山は風邪で体調を崩していた事です。上位を目指して今日までトレーニングしてきたのですが、コンディションを考えると最初は無理をせず、まずは完走を目指しチャンスがあれば上位を窺う作戦に切り替えたのです。

スタート時間は午前8時です。会場に充てられた登野城漁港には、大会本部を中心にオフィシャルや医療センターなどの大型テントが配置され、トラブルに対しても十分対応出来る環境が整ったといえるでしょう。ゴール地点には大型ビジョンも設置され、ゴールする選手一人ひとりの表情まで見逃さない配慮がなされていました。大会に賭ける島民の意気込みは大変なもので、地元の高校生を始め市民の多くの方がボランティアで大会を下支えしている事も見逃せません。

選手達は、競技開始1時間前にはスタート地点からバイクに乗り換えるトランジションエリアまで、出場の順番待ちで大行列をなしています。エイジのトップグループは、漁港のスイムスタート地点でスタータの合図を今や遅しと待ち構えています。

勝山もトップスタートの位置で、ストレッチや身体を揺すりながらリラックスする姿が遠目にも確認されました。大会委員長から大会の開催を宣言する挨拶があり、選手それぞれが今日の為に鍛えてきた成果を遺憾なく発揮出来るようにとエールを送っておられました。緊張がピークに達したその時、トップグループはスタータの合図で一斉に海に飛び込んで行きました。

=次回へ続く。どうぞお楽しみに!=

■勤務先:http://www.juliajapan.co.jp/
■筆者プロフィール
中宮希史   [株式会社ジュリアジャパン 相談役]
氏  名 中宮 希史(なかみや まれし)
■経歴    
1948年 北海道札幌生まれ。
1972年 東京造形大学絵画科卒業。
1972年 株式会社ジャパングラフィックスにイラストレーターとして入社。
1978年 30歳を機に札幌にUターンを決め込み、株式会社北海道たきに入社、主に広告のイラストを手掛ける。
1986年 有限会社グラフィックアソシエーションを設立、デザイン全般の業務にあたる。
1989年 東京でイラストの個展を開催するが、以降も含めあまり話題にはならなかった。
1994年 株式会社ジュリアジャパンを設立して3Dアニメーションやゲームソフトを中心とした業務に携わる。
2005年 訳あって沖縄に支社を創設してしまう。
2009年 社長職を辞して会長に就任。
2010年 相談役に就任する。
     
通常業務の側ら学校法人芸術デザイン専門学校講師や卒業制作審査員を務める。その他、趣味は多数。

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