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・=ぶつかった方が、いいよ。=「五刻豊穣記」さかざき君のコラム
・=ぶつかった方が、いいよ。=「五匹の猿を退治しろ!」うずまさ君のコラム


“強くなくては生きていけない、優しくなくては生きている資格はない”
どこかで目にし、耳にしたちょっと有名なセリフです。
心のビタミン・コラムは、中学生、高校生、大学生の諸君には、これからのキミの生きていく未来を考えるきっかけに。
すでに社会に出て活躍されている方、あるいは多少失意の中にある方には、もう一度、自分を考えてみる端緒に。
そして、長い間会社や社会につくされ、おおいなる安息の日々を過ごされている方には、来し方に思いを馳せ、より良き明日の活力にして頂ければと念じて、連載いたします。隔月で交互にお楽しみいただけます。

五刻豊穣記

■其の壱「少年の刻」 さかざき けんじろう

 北海道の夏は素晴らしい。 紺碧の空から降り注ぐ陽光に、頬をなでる爽やかな風は、何かやる気を起こさせてくれます。そんな中で、「よさこいソーラン祭り」で乱舞する若者の吹き出る汗をみていると、“青春ってなんてすばらしいんだ”と想います。
 豊かな若者の表情は、それだけで私たちに希望を抱かせてくれます。

 今回、ぼくは「心のビタミン」と題するコラムを担当させていただくに当たり、大学が目指そうとする「行学一如」の思想を考えてみました。この言葉には、“若者よ、とにかく前に向かって歩く事からしか、何事も始まらないんだ。 失敗するかも、と言う心配もあるが、失敗したかどうかは後の結果でわかるもので、初めから誰も失敗を予想して行動する人なんていないんだ。 だから、ぶつかってみろよ!” と勧めているように受け止めてみました。 それはまた希望への挑戦賛歌でもあるのですね。
 ぼくは今、すでに過ぎ去った「時」を振り返りながら、少年時代の多くの事を覚えている事に気づいたのです。 そう思うだけで「懐かしさ」より「どきどき」する自分を見出す事が出来ます。しかしここでは若い人たちが体験しなかった事を綴ってみようと思います。

 ぼくが小学校に入るころには、すでに日本は戦争への道をひた走りに走っていた状態だったのですが、そんなに緊張した思いを感じませんでした。しかし、小学校に行った途端、そこにはやさしい先生に混じって、軍服を着た怖い先生がいて、いつも木刀で生徒たちを怖がらせたり、殴ったりする光景を目の当たりにするようになって、これが戦争と言うものだ、と初めて感じた緊張感と恐怖感を思い出します。
 やがて「敵」つまりアメリカ軍の襲来は自分たちの住む所まで迫ってきていました。子どもたちは、被害を受けないようにと、危険性の少ないと思われる地域に移住することを強いられ、親元を離れて生活をはじめました。 しかし、そこにすら毎日のように落ちてくる爆弾を目の当たりにし、けたたましい襲来を知らせるサイレンの音、家の中の電気を覆いで隠して真っ暗にし、さらに最も危険な時には、土の中に掘った穴(防空壕)に潜り込む生活を毎日のように続けていました。
 少年の心に焼きついた「あの時」は今も忘れる事は出来ません。
 やがて夏の暑い日、蝉が耳を劈くように泣く真っ青な空の下、集められた地域の多くの人が神妙な表情でラジオから流れてくる声に聞き入っていました。 日本が戦争に負けたという天皇の声でした。 1945年8月15日、小学3年の時でした。
 急に社会や周囲の人たちが優しく見えたように思いました。 そのとき、誰もが心に描いたのは、“これで自由になり、希望のもてる社会になる”ということだったでしょう。
 多くの人はそうはいっても、目標を失った絶望感から希望を取り戻すにはもっと先のことでした。“ まず生きることだ ” 生への執着をこれほど切実に感じたことはなかったかもしれません。 野や川が、虫や花が幼い時代のかけがえのない友達だった少年期。 その時期は「何かを奪っていく力」への怒りや恐怖であり、今の人生にずっと流れてきた「生きることへの源泉」になっているように思うのです。
 老木になろうとするぼくも、多くの犠牲の上に今があり、手に米粒一つない絶望の淵から懸命に這い上がろうとしたたくましさ、そして「見えない希望をむしろ見えるように創っていった希望」の上にあることを感謝なくして思い起こすことはできません。
 少年の時、それは小さな小さな望みだったかもしれませんが、大人たちと同じように、何かにぶつかって行こうという意欲を抱いた最初の「とき」でもあったのです。
 荒れ果てた町の中で復興のつち音が響く中、小学校から中学校に進みました。しかし、その大多数は、中学校を卒業と共に、高校には行かず、家計を助けるために仕事につくようになりました。 ぼくは、苦しい家計の中でも、泣き言一つ言わずに高校に進学させてくれた親の後姿に何か崇高なものを感じていたように思います。


いよいよ始まりました。避けることの出来ない現実を前にした人間の弱さと、それを乗り越えようと考え、もがき突き進む少年の成長。次回、お楽しみに。


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