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・=ぶつかった方が、いいよ。=「五刻豊穣記」さかざき君のコラム
・=ぶつかった方が、いいよ。=「五匹の猿を退治しろ!」うずまさ君のコラム


“強くなくては生きていけない、優しくなくては生きている資格はない”
どこかで目にし、耳にしたちょっと有名なセリフです。
心のビタミン・コラムは、中学生、高校生、大学生の諸君には、これからのキミの生きていく未来を考えるきっかけに。
すでに社会に出て活躍されている方、あるいは多少失意の中にある方には、もう一度、自分を考えてみる端緒に。
そして、長い間会社や社会につくされ、おおいなる安息の日々を過ごされている方には、来し方に思いを馳せ、より良き明日の活力にして頂ければと念じて、連載いたします。隔月で交互にお楽しみいただけます。

五刻豊穣記

■其の五「大年の刻」 さかざき けんじろう

阪崎 健治朗 今回の「心のビタミンコラム・五刻豊穣記」は、いよいよ最後の刻を迎え、ぼくに与えられた其の五は、「大年の刻」というのです。 大年という言葉が一般的にあるのかどうかは調べていないので、定かではありませんが、まもなく後期老年期を迎えようとしています。いつまで生きるにしても、生かされている間は、誰かのため、何かのために役に立ち、感謝と賛美のうちに生涯を終える自分でありたいと願っています。 そうした終盤に差しかかった自分を振り返る意味で、作家の村上龍氏の“模索の旅”が多くのヒントを与えてくれたので、その言葉を少し借りながら自分を考えてみようと思います。

 「これからの日本はどうなっていくのか、自分たちはどうすればよいのか。」これが村上氏の旅のキーワードです。 村上さんは、日本人なら誰でも知っている3人の高名な方を訪ねていきます。この旅の始まりは「今まで自分たちは、日本を主語で考えてきたが、日本の教育を考えるとき、いつも国は・・・などマクロで考えてきた。実は大切なことは、個人や自分レベルで考えたほうが分かりやすいのではないか。」と思いつき「今まで用意された中で生きてきた自分たちは、自分の力で道を探し、歩もうとする自信を喪失している。」と考えたのでした。

 今までのように日本を主語で語るのではなく、個人がどう生きていけば良いのかを中心にすえて、その中から日本の再生を考えてみたいというのが村上さんの求めるところでもあったように思います。 その中のお一人であるカルロス・ゴーンさんを取り上げ、皆さんとご一緒に考えてみたいと思います。

 カルロス・ゴーン。ゴーンさんは日産自動車の社長として着任3年で会社を再生させた、言わずと知れた豪腕の逸材です。1954年レバノン系ブラジル人の父とレバノン系フランス人の母のもとブラジルに生まれ、幼い頃から国を変えての移住や度重なる生活環境の変化を経験したそうです。24歳の時フランスの有名なタイヤ会社に勤め、その2年後、早くも若くして700名の従業員をかかえる工場長になりました。

 30歳の時COOとなって生まれ故郷のブラジルに戻りハイパーインフレの中、苦闘しながらも見事にプロジェクトを成功に導いたそうです。そうした若くして得た経験を通して疲弊した日本社会を見て、その中で復活のヒントを得たのは、ゴーンさんがポジティブな考え方の持ち主であったからだということに村上さんは気づくのです。 回復させた理由を 「改革に専念した事。外国の文化に対応したから。」と答えています。 成功する人間の大切な資質は、(1)目的をしっかり持ち、やる気のある人(仕事の能力はそこそこでも)(2)困難に出会っても、けして諦めず逃げようとせず解決することに集中し、経験のためには多くのことを学ぶ必要があると考える人、とあげたそうです。 企業の再生には、本質を理解すること・・・時間と労力が必要だが、問題を理解する力、なぜだめかを診断する力、何を解かなければならないかを考える力だと主張したそうです。現状に満足すること自体が要注意なのです。どんな環境に変わっても走り続けることが重要で、未知の世界に対しては、信念を持って挑戦すれば必ず道は開かれるといいます。

 また今の時代は、複雑な社会の中でどういう人が成功者なのか見えにくい時代です。異なる文化と出会っても自分自身の価値観を持つことが必要で、その上で異文化への適応力がないと生きられない時代でもあるのです。他の文化と交流し何を学ぶのか、その中での価値観をどう創るかが大切な課題です。グローバル化とは変化することであり、そこにこそチャンスはあるのです。 これまでの日本の常識にはとらわれず、改革に妥協しないことが重要であったと説きます。昔は人生の成功者のモデルはありましたが、現在そのモデルは共通の姿としては見つかりません。「安定」があると思うのは今や幻想であり、企業も社会も常に変化の波にさらされています。安定していてもいつ困難に直面するかも知れないのです。それは私たち自身を取り巻く日本の社会も世界も、驚くべきスピードで変化しているのですから。

 自分ひとりが安定していても意味はありません。高いレベルを狙うのは変化への挑戦を意味しています。 何事も前向きに捉えることによってしか社会に貢献する道はありません。社会は身体と一緒で、変化するし、うまく適応しながら生きていかなければなりません。変化しないのは観念的な死以外ないのかもしれません。

 誰もがそうですが、変化にさらされたり変化を求めたり、冒険に見えるようなことをするとき、常に不安はついてまわります。 だからこそ来たるべき時に備えて集中力や緊張感が必要で、不安や焦燥は失敗も含めた多くの経験を積むうちに上手にコントロールが出来いつのまにか解消し、克服できていくものなのです。

 ゴーンさんの確信に満ちた話は、もちろんゴーンさん自身の経験が下地になっているのは当然です。だれもがゴーンさんのように成功するとは限りません。

 しかし、ゴーンさんは私たちに多くの示唆を与えてくれました。
 目標を持てない若者が何をしたいかということだけで悩んでいるとしたら、もしかしたら永遠に目標を見出すことが出来ないかもしれません。「どのような自分になりたいか」を考えてみてください。そうして自分の身の回りの小さなことを積み上げていくうちに次第に何かをつかみかけている自分を感じることができるはずです。目標はそこから急に羽が生えたように明確な姿となってさっそうと飛び立っていきますから。

 この老木は枝も折れ、葉っぱもなく、枯れ木のようになり、ただの切り株だけになってきたかも知れないのですが、その上に誰かが腰を下ろしていただけるだけのスペースはまだあるつもりです。これも親から引き継いできた長い人生の一コマであり、ぼくもまた次の君たちのためにしっかりとバトンを渡せるような大年を大切に生きたいと念じているのです。

 すべての人の五刻が豊穣でありますように。
 お読みいただいてとても感謝です。


近年、「リスク管理」という言葉がテレビ報道や新聞記事に良く出てくるようになりました。でも、よく考えてみますと、われわれ人間の及ばない処にハプニングや青天の霹靂といった事象が存在しているわけで、もともとリスクなるモノは管理などすることの出来ない概念のように思えてきます。人の手におよばないもの、個人では及ばないもの、集団ではおよばないものに対する最大の力は、「覚悟する」「覚悟し、教養をもって行う。あきらめず前に進む」ことかも知れません。
「どのような自分になりたいか」を考えて行動するとき、語られている「リスク管理」の発想から脱却して、人間を磨き教養を高めることから入る方が「リスク」を心で管理できるのではないでしょうか?

阪崎健治朗HP http://www16.ocn.ne.jp/~com212/


■筆者プロフィール
阪崎 健治朗 SAKAZAKI KENJIROU
生年月日: 1935年(昭和10) 12月25日
学歴: 日本大学文理学部英文科(通信)卒業
職歴: 中学校教諭を経て、神戸・北九州・富山・日本YMCA同盟北海道の各YMCA勤務。その他、大学の講師として「集団組織論」、「基礎作業学レクリエーション演習」、「国際ボランティア論」、「国際関係論・国際交流論」等を担当。
社会活歴: 人間講座主宰(ロビンソンデパート)
研修歴: 感受性訓練(JICE)、交流分析(TAT)受講。
著作: 「職業と人間形成」(共著)(日本YMCA同盟出版)
「神戸とYMCA百年」(神戸YMCA)
「ボランティア論」(青葉書店)
「国債理解 重要基礎用語300」(共著)(明治図書)

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