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「五穀豊壌記」に続き、阪崎さんの新シリーズも月1回でスタート致します。
筆者の阪崎さんは70才になりますが、気力ますます充実。今年ラジオのパーソナリティーとしてデビューし活躍を始めております。また、美術解説者試験にも見事合格し、道立近代美術館で絵画に関しての解説の社会活動もされております。
新シリーズ「3ミリメートルの悦楽」は、読む力、理解し考える力、行動する力を読書と本を通して鍛えることを提唱するものです。言わば毎日継続するそれぞれの1ミリメートルを積み重ね“1日3ミリメートルの前進を喜ぶ”大切さを考えて頂きたいと思います。きっと明日はもっと良いことがありそう!と感じられることでしょう。
どうぞお楽しみに。

3ミリメートルの悦楽

■1.「幸福って何?」  さかざき けんじろう

阪崎 健治朗 正直にいえば、ぼくは読書を趣味にしていない。ちょっと振り返ってもあまり心に残っている本を思い出せない。それでも随分本を買っていて、転勤や引越しのたびにダンボールに本を詰めて持ち歩き、とうとうそのダンボールも開かず車庫に放置したままだった。 もう10年ほど前だったろうか、とうとう20冊ほど残してあとはすべて古書回収業者に来てもらって、ダンボールのままもって行ってもらった。 空っぽになった車庫を見て、何か自分の人生に一区切りをうったような気がして、少々寂しく思ったものだった。
 大量に処分した中で、運よく捨てられずに救われたたった20冊の本は、どうも仕事と関係のないものばかりで、ちょっと堅く言えば、人生の過ごし方のような本ばかり残ってしまった。 その中に「星の王子さま」が含まれていたのである。
 今回から毎回読んでいく本の紹介かたがた、一緒に考えていただければと願うのである。そして「読応力」「思索力」「行動力」を身につけることを目標にしたいと思う。

 さて、多くの方は「星の王子さま」をお読みになったことと思うので、それはそれとして、もう数年前になるだろうか、ふと本屋で手にとって見たのが、今回取り上げようと思う「星の王子さまの幸福論」だった。
 大人の読む童話とでもいえそうだが、この本の表紙の帯にこんなふうに書かれている。「幸せは手の届くところにあるのです。星の王子さまは現代人にとっての幸福になるための物語だったことを知っていますか? この本は星の王子さまから読み解いた、あなたが幸せになるためのガイドブックです。」とある。
 逆に言えば、幸福を妨げるものを探し、それをやっつけてしまえば、きっと幸福が手に入るよ、と導いてくれるような内容なのである。
 この本の作者渡辺 健一は、はじめのところで「誰だって幸せになりたいと思っている。もしそうなる秘訣があるのなら、教えてほしいと思っている。でも誰も教えてくれない。だったらどうしたらいいの・・・・? というのが多くの人の本音だろう。」と冒頭に書いている。

 さる7月26日宇宙飛行士野口 聡一さんはスペースシャトル『ディスカバリー』号に乗って宇宙の様々な疑問の謎解きのために宇宙に行き、地球219周14日間の旅をし、8月9日帰還したことは誰もがよく知っていること。
 星の王子さまも、バラの花の咲く小さな星に住む星から宇宙に冒険の旅にでて、いくつもの星の大人たちと出会い、人生の生き方を探ろうとする。そしてやがて地球にもやってきた。そこで、地球に住む人たちの寂しい生き方にがっかりするわけだ。どこかおかしいなあ、と疑問を持ってしまう。
 作者はこの王子さまを通して語りかけてきた原作者のサン・テクジュぺリが何を人間に投げかけているのかの謎解きをする。そして「幸福になるために大切なこと」はなんだろうと王子さまの目で見つめていきながら、結局のところ、それは大人たちが失ってしまった「澄んだ真っ直ぐな子どものころの瞳」で見ることではないかと教える。で「幸福になるために大切なこと」は「ほんとにそれでいいのかな?」と疑ってみることだ、という。

 出会った5人の大人たちにはあまり好意を寄せられなかった。なぜなら、王子さまの目には幸福どころか不幸に見えた人たちばかりだったから。呑み助やワンマンやうぬぼれ屋さん、お金のことしか考えない大人、知識をひけらかす大人・・・。しかし最後の6番目にあった大人は、ちょっぴり好意を持った。この男は点燈夫だった。毎日夕方になると、街のガス燈に火をともしまわり、朝が来るとその火を消して回る。それだけのことを繰り返すだけのことにすぎない。特に将来の目標があるわけでもなく、誰からも省みられることも少なく、ただ黙々と同じことをするだけだけど、王子さまは好意を持つのである。

 さあ、あなたはこんな点燈夫をどう思うだろうか。はじめの5人の大人たちは周りのことを考えず、自分のことばかり考えるタイプ。そんな人は、自分は幸福と思っているかもしれないが、周りに分かち与えるものを持っていない。点燈夫の行為は、自分は単純なことの繰り返しだが、そのことによって、回りを明るくし、安心を与える、そんな人間が幸福をもたらす人なのだ、と王子様は考えた。永い旅をした王子さまが何かを見出し、自分の星に帰るときが来た。原文から引用してみよう。
「 夜になったら、星をながめておくれよ・・・・。
きみは、ぼくの星を、星のうちの、どれかひとつだと思ってながめるからね。
 すると、きみは、どの星も、ながめるのが好きになるよ。星がみんな、きみの友だちになるわけさ。 」と。

 坂本 九が歌った「見上げてごらん、夜の星を・・・」とさわやかなメロディが口をついで出てきた。遠くの星を見つめるだけで、ふと何かをとりもどすことができるかもしれない。

 ぼくたちは忘れているのだろうね、きっと。幸福とは何か、幸福になるにはどうしたらよいのだろうか、ということを。誰かのために役立つ自分があるのだと考えると、次の行動が見えてくるように思うのだが。
「星の王子さまの幸福論」渡辺 健一著(扶桑社 2000年)



阪崎健治朗HP http://www16.ocn.ne.jp/~com212/


■筆者プロフィール
阪崎 健治朗 SAKAZAKI KENJIROU
生年月日: 1935年(昭和10) 12月25日
学歴: 日本大学文理学部英文科(通信)卒業
職歴: 中学校教諭を経て、神戸・北九州・富山・日本YMCA同盟北海道の各YMCA勤務。その他、大学の講師として「集団組織論」、「基礎作業学レクリエーション演習」、「国際ボランティア論」、「国際関係論・国際交流論」等を担当。
社会活歴: 人間講座主宰(ロビンソンデパート)
研修歴: 感受性訓練(JICE)、交流分析(TAT)受講。
著作: 「職業と人間形成」(共著)(日本YMCA同盟出版)
「神戸とYMCA百年」(神戸YMCA)
「ボランティア論」(青葉書店)
「国債理解 重要基礎用語300」(共著)(明治図書)

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