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「五刻豊穣記」「3ミリメートルの悦楽」に続く、さかざき君の新シリーズ3がスタートです。高度に発展してきた現代社会のなかで、ともすれば軽視されそうな人と心の有り方を最も大切に考える筆者からの「考える手紙」これまで同様、今シリーズのテーマです。テクノロジーの長足の進歩によって、巨大な恐竜のようになってしまった文化・文明をもう一度仔細に眺め、人と心を考えてみたいと筆者、阪崎さんは考えています。悩みながらもしっかりと前進する高校生、大学生、社会人のみなさんにとって新シリーズが“明日の自分を考える”きっかけになればと思います。隔月掲載の6回シリーズ、どうぞお楽しみに。

恐竜の虫めがね

■3.夢を持て 〜二十歳になる息子たち〜    さかざき けんじろう

阪崎 健治朗

親子関係や人間関係が希薄になっている時代だからかもしれないが、最近、特徴ある声と堂々とした身体、風貌から強烈な匂いを発していたある歌手の姿が、しきりに想いだされる。

「お前が二十歳になったら  酒場で二人で飲みたいものだ  ぶっかき氷に焼酎入れて つまみはスルメかエイのひれ」 
「お前が二十歳になったら  思い出話で 飲みたいものだ  したたか飲んで ダミ声上げて お前の二十歳を 祝うのさ」

この曲「「野風僧」は伊奈二郎が作詞し、山本寛之が作曲してシンガーソングライター河島英五が歌って大ヒットした曲である。知っている方は多いのではないかと思う。ぼくもカラオケで数え切れないほど歌った。特に次のリフレインがいい。好きなのだ。

「いいか男は 大きな夢を持て〜  野風僧、野風僧、男は夢を持てー」
「いいか男は 生意気ぐらいが丁度いい いいか男は 大きな夢を持て 野風増 野風増 男は夢を持て・・・!!」

しかし、河島英五は娘の結婚式に出た後、急逝する。そして酒を酌み交わすのを楽しみにしていた息子とは楽しみを実現することなく、二十歳になる前にこの世から去っていった。晩年に舞台で歌った「元気出していこう」は自分を鼓舞するような、人は生きている間は生きる希望を失ってはだめだ、と言い残すように歌っていたのが今もぼくの心に残る。

父親はいつも順調に良く育ってくれている子どもの日々を楽しみに眺めていて、「早くコイツと酒を酌み交わしたい」と思っている。一方で嫁ぐ娘には、いつまでもオレの手元に居てほしいと願う。親って勝手なものかもしれない。でも親子の絆というのは、例え人からグータラと思われてもオレの子どもだと誰はばかることなく誇りに思うものだ。

ぼくには二人の娘を授かっている。それぞれ自立して親元を離れて生活をしている。けれども絶えず親のことを案じてメールという武器で安心させてくれる。ぼくらも何くれとなく、季節のものを送ったりして親子の確かな関係を保っている。親にとっては嬉しいことだ。

河島英五は1952年4月23日に生まれ2001年4月16日に異界に行った。生涯48年間の時間である。あまりにも早すぎた死である。亡くなって5年8ヵ月後『河島英五音楽賞』を友人・知人が作り、若い未来の音楽家を育む取り組みをし、2007年第1回の受賞作品が決まった。「太陽(ひかり)」だそうだ。

だみ声上げて河島英五が若者たちを励まし、前に向かって進め、少々の失敗は恐れるもんじゃないよ、と歌ってくれていても、どうもいまひとつ「がんばるぞ!」といえない社会環境や風潮が際立ちすぎる。だれもかれもが「申し訳ございません」と頭を下げる昨今、人の頭の天辺ばかり見せつけられている。これでは、“若者よ希望を持て”といえる責任ある大人の態度かい、と問いたい気持になっているのではないだろうか。

ちょっとくらい破目をはずしたからといって、すぐに若者を批判する世の中というのは、大人になっていないとい言うことさ。

河島英五ならそんな七面倒くさい話や頭を下げる姿を見るような実にくだらない話などをやめて、 「それより、どうなんだ。おまえの夢を聞かせてくれよ」「どうだ。彼女でも出来たかい」「お前も随分生意気なことを言うようになったなあ」 と、酔った勢いでまるで機関銃のように途切れることなく聞きだそうとする。おやじは何気なく眺める息子の横顔に頼もしさを感じるものだ。「こいつもオレを越えようとしているな」と父を越えようとする姿にちょっぴり嫉妬心を燃やしながら、嬉しくて嬉しくておどけて踊りたくなるような心境なんだと思う。その成長にチョット安心をするのである。

若者には冒険がつきものだ。今も昔も変わらない。特に旅は格別に楽しい冒険だ。一人旅には不安もあるが、行くところで土地の人々は親切にしてくれる。なんて人は優しいのだろうと身体で感じる。ぼくもそうだった。小諸にも行った。千曲川にも行った。輪島も。どこも一人旅だった。そこには何かの夢があったわけでもない。失恋したわけでもない。冒険しようと何かの意図があったわけでもない。ただ行きたいから行ったに過ぎない。それが一人旅だ。冒険心を育んでくれるものだ。

50年もの時間が経過した現在「あの時間」は、ぼくの心のアルバムの中にしっかりと納まっている。夢に向かって歩んでいたんだなと、つくづく思うのである。

じっとしていてはだめだ。君のいるところから飛び出すことだ。そうしたら一夜で消えてしまうような幻ではなく、本物の夢を掴むことができるとぼくは信じる。

■お知らせ■
日頃より、さかざき君(阪崎健治朗)、うずまさ君(太秦康紀)のビタミン読本・エッセーをご愛読いただきまして皆様には心から厚くお礼を申し上げます。さて、2008年のスタートは、お正月をはさみますので、1月はお休みをいただきまして2月から連載開始とさせていただきます。新しい年に、新しい思いと希望を抱いてスタートしたいものです。どうぞ、読者の皆さまにとりまして新年が良き年でありますように。

阪崎健治朗HP http://www16.ocn.ne.jp/~com212/

■筆者プロフィール
阪崎 健治朗 SAKAZAKI KENJIROU
生年月日: 1935年(昭和10) 12月25日
学歴: 日本大学文理学部英文科(通信)卒業
職歴: 中学校教諭を経て、神戸・北九州・富山・日本YMCA同盟北海道の各YMCA勤務。その他、大学の講師として「集団組織論」、「基礎作業学レクリエーション演習」、「国際ボランティア論」、「国際関係論・国際交流論」等を担当。
社会活歴: 人間講座主宰(ロビンソンデパート)
研修歴: 感受性訓練(JICE)、交流分析(TAT)受講。
著作: 「職業と人間形成」(共著)(日本YMCA同盟出版)
「神戸とYMCA百年」(神戸YMCA)
「ボランティア論」(青葉書店)
「国債理解 重要基礎用語300」(共著)(明治図書)

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