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「五刻豊穣記」「3ミリメートルの悦楽」「恐竜の虫めがね」に続く、さかざき君の新シリーズ4が始まりました。複雑に入り組んだ現代社会の迷路の中で、ともすると迷子になってしまいそうな個人。より大きな、更にもっと大きな幸福や満足を貪欲に求める社会の風潮に、筆者は幸せの大小をもう一度考えてみるのです。今シリーズも「考える手紙」がテーマ。どうか読者の皆さんにも一緒に考えていただきたいと思います。悩みながらもしっかりと前進する高校生、大学生、社会人のみなさんにとって新シリーズが“明日の自分を考える”きっかけになればと思います。隔月掲載の6回シリーズ、どうぞお楽しみに。

蟻たちの幸福な足音

■1.リレー・フォー・ライフ 〜命をつなぐ絆〜   さかざき けんじろう

阪崎 健治朗

この日、11月7日の夜、放送で「リレー・フォー・ライフ」というドキュメントを聴いていたとき、突然 飛び込んできたのは、ジャーナリストの筑紫哲也氏が肺がんのため73歳で亡くなったというニュースでした。新聞社の記者を皮切りにテレビのニュースキャスターや大学の講師として政治・経済・文化など幅広い分野を縦横無尽に活躍したことは多くの人の知るところですが、昨年10月放送の中で自分はガンに罹っていると宣言したそうです。それからちょうど1年目、ついに死を受け入れざるを得なくなりました。多くの人が筑紫さんの死を惜しみ、悼んでいます。ぼくはもちろんテレビや記事でしか筑紫さんのことを知りませんが、彼の発する意見や主張は右からも左からも共感を得るほど不思議に説得力のある思考の持ち主だと周囲は語り、こうしたジャーナリストはもう現れないだろうとさえ聞きました。

さて「リレー・フォー・ライフ」の放送は、ガンに罹患した方々がガンの告知を受けた後の人生の激変、なぜ自分が、という悶々とした悩み、絶望の涙の中で、夫や妻、育ち行く子どもや家族のことなど尽きぬ悩みを振り払いながら、強く生きようと思い、その意志を行動で示そうと周りに呼びかけてその名の通り、命をつなぐ運動を始める内容でした。 劇的だったのは、2007年芦屋会場の「リレー・フォー・ライフ」に激励するために参加した歌手のアグネス・チャンさんが、病気と闘いながら一生懸命に生きる姿に、すごく感銘をうけたのですが、その1週間後まさかの自分に乳がんが見つかったのです。

アグネス・チャンさんは翌年の大会で告白します。「どうして私ががんなんだろう」と悔しい気持ちで一杯でした。手術を終えてからも、家族や子供の将来を考え、この先どう立ち向かっていけばいいのか不安でした。そのような時に、芦屋の方々から応援メールをいただきました。温かいメッセージを読むうちに『あぁ、みなさんに見守られている。助けてもらっている』と思って涙が止まりませんでした。それまでたまっていた不安や悲しみ、そして感謝の気持ちがいっぺんにこみ上げてきて、もういっぱい泣きましたね。がんに前向きに立ち向かっていこうと思えたのは、リレー・フォー・ライフで出会った皆さんのおかげです」、と語っていました。こんなに生きるということを真剣に考え、いのちの愛おしさを感じたことはないということが強く伝わってきます。

リレー・フォー・ライフは1985年にアメリカ・ワシントン州シアトル郊外で、アメリカ対がん協会のゴルディー・クラット医師が始めたイベントだと伝えていますが、患者や家族、友人、知人、医療関係者が24時間リレーで歩き、募金への協力や悩みの中にある人々を励まし、一緒に人生のパートナーとして歩く運動です。日本では2006年初めて開催されました。医師、患者やその家族、友人が数人ずつのチームを組むリレー形式になりました。24時間歩き続けるなかで、参加者の間にがんと闘う連帯感が生まれたのです。現在では全米4000カ所以上、世界20ヶ国以上で行われるようになっているそうです。

また共通するプログラムとして「サバイバーズ・ラップ」(がんと闘う人たちの勇気を称え、がん患者やがんを克服した人たちが歩く)、「ルミナリエ」(がんで亡くなった人たちを偲び、一人ひとりの名前を記した紙袋の中にろうそくを灯して並べる)などがあります。近年多くの著名人がガンに罹ったことを堂々と話し、余命の生き方と死との向き合い方を自ら語る姿に、周囲は痛ましさと自分を鼓舞して戦う勇気に感動を受け、自分に照射することさえあるのではないでしょうか。死因の30%がガン、2004年のデータではガンの総患者数128万人(「代替医療インターネット情報センター」)で、今ではもっと増加していることでしょう。そう簡単にイエスかノーかでは割り切れないものがあります。

あるママ患者さんは子ども達への遺言のように日記を書き、「いつまでもママはそばにいるからね、手を離さないでね、いつかよくなったらもっと遊ぼうね。」と言葉を残しています。そして「たとえ、ママがいなくなっても、子ども達には怖がらないで、と伝えておきたい。明日を信じて安心して成長して欲しい」とみんなと一緒に生きていることの大切さをわかちあっていくのです。互いに病を持つものがひとつ所に集まり、経験を話し、ショックに落ち込んでいる人に生きる時間を考えましょうと勇気付けることによって仲間意識が生まれてくるのです。

日本にもリレー・フォー・ライフの組織がどんどんできつつあり、共鳴者の輪が今全国に広がりつつあるようです。今回放送の中で覚えていることと情報を協会から拝借して書いてみました。この運動を続けるぼくたちはいつ何が起こるか予想して生きているわけではありません。だから思いもよらないことが起こると、自分を見失うことがあるのかもしれません。そんな時、独りで抱え込まないで同じ仲間に声をかけ、悩みを共有することによって、少し軽くなったり、勇気付けられたりすることは結構多いのではないでしょうか。もし今君が何かに躓いたとしたら、話してみようという仲間が頭に浮かびますか。

■お知らせ■

日頃から苫小牧駒澤大学webサイトにお来こしくださいまして、読者の皆さんには厚くお礼を申し上げます。生活環境や経済環境が更に厳しい昨今ですが、ともかくこの1年を乗り切り、希望を持って新しい年を迎えることは、大変意義深いことと思います。焦らず驕らず忍耐強くあることが、きっと将来を切り開いてくれるはずです。「行学一如」は学校法人駒澤大学、苫小牧駒澤大学の建学の理念です。新年は思考と行動をフル回転して自己を鍛え実りある年にしたいものです。さて、さかざき君エッセーの2009年は、1月がお休みで、掲載開始は2月からのスタートです。読者の皆さんの2009年が素晴らしい年になりますように念願しております。

阪崎健治朗HP http://www16.ocn.ne.jp/~com212/

■筆者プロフィール
阪崎 健治朗 SAKAZAKI KENJIROU
生年月日: 1935年(昭和10) 12月25日
学歴: 日本大学文理学部英文科(通信)卒業
職歴: 中学校教諭を経て、神戸・北九州・富山・日本YMCA同盟北海道の各YMCA勤務。その他、大学の講師として「集団組織論」、「基礎作業学レクリエーション演習」、「国際ボランティア論」、「国際関係論・国際交流論」等を担当。
社会活歴: 人間講座主宰(ロビンソンデパート)
研修歴: 感受性訓練(JICE)、交流分析(TAT)受講。
著作: 「職業と人間形成」(共著)(日本YMCA同盟出版)
「神戸とYMCA百年」(神戸YMCA)
「ボランティア論」(青葉書店)
「国債理解 重要基礎用語300」(共著)(明治図書)

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