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「五刻豊穣記」「3ミリメートルの悦楽」「恐竜の虫めがね」に続く、さかざき君の新シリーズ4が始まりました。複雑に入り組んだ現代社会の迷路の中で、ともすると迷子になってしまいそうな個人。より大きな、更にもっと大きな幸福や満足を貪欲に求める社会の風潮に、筆者は幸せの大小をもう一度考えてみるのです。今シリーズも「考える手紙」がテーマ。どうか読者の皆さんにも一緒に考えていただきたいと思います。悩みながらもしっかりと前進する高校生、大学生、社会人のみなさんにとって新シリーズが“明日の自分を考える”きっかけになればと思います。隔月掲載の6回シリーズ、どうぞお楽しみに。

蟻たちの幸福な足音

■4.変化は成長の過程 さかざき けんじろう

阪崎 健治朗

ぼくはいろんな人と出会うことによって、何らかの感化を受けて変わっていく自分を見ることがあります。その感化の強弱はあるにせよ、「何が変わるの?」と問われても説明できないけれど、何かが変わっていくことをひしひしと肌に伝っていくような思いのすることがあります。

そんなことってありませんか。

たとえば、今の自分があるのはあの人との出会いによって受けた思想や行動、そして指導によるのだと思っている方も多いのではないでしょうか。だからといって今までの自分を棄てて大きく旋回するような自分があるわけでもないのです。それでもどこか自分が変わっていくのです。確かに。

それは一歩飛躍した自分を見ているような感じをしているのです。

そんなことを考えながら、ぼくは僕自身を振り返って見ました。本当にぼくは変わったのか、変わったとしたらどんなふうに。う〜ん、改めて自分を見つめるというのはむずかしいことですね。

でも確かにぼくが幾度か変化したのを覚えています。そしてその積み上げの結果、今のぼくがあると思っているのです。それはいつも「生きることへの希望」と繋がっていることでした。

若いころ、これは以前に書いたと思うのですが、青年期に大病をしたためにほぼ絶望していた自分が病を癒えて生きる歩みが赦されたときでした。打ちひしがれた毎日、何をすることもなくじっと天井を見て過ごした辛い日々からの解放は、まさに新しい自分の誕生だと思ったものです。

その次はこんなに長く1箇所で働かせてもらえるとは思っても見なかった職場に、30年もその場を与えてくださったそのときの指導者の人格に触れたときでした。その人は言動の確信を持ってぼくたちに伝え、それだけではなく、教育界はもちろん、様々な経済人も学界の人々も、そして老若男女が深い尊敬と学びの姿勢を持って接する姿を横でみて、出会いの素晴らしい空気だけを吸収し、いつしか自分の理想とする人物と重ねていました。米寿を越し今も壮健に活躍されていらっしゃるが、そのエネルギーの源泉は何だろうとふと考えます。しかしそれは到底追走できるほどの距離ではない稀有な人であることが理解できるようになりました。だからといってぼくはスピードを落としたわけではありません。たどり着くのが目標ではなく、たどり着こうとする過程が大事だと気づいたのです。

人にはそれぞれの生き方があり、そのことを周囲があれこれ言うべきではありませんが、やはり人間は今より成長したいという願いを持っているはずです。ではどのように成長したいのか、その回答は、自分を成長させてくれる目標を定めているかによって決まるのではないでしょうか。

ただ日々を無駄に過ごすことのないように、惰性で生きるのではなく、常に新鮮な空気を吸いたくなるように、新しいものを求め新しいことを始める意思がとても大切です。

今、ぼくは中国の孔子の言った言葉「古希」を越しました。現代社会においては70歳が珍しいことではありません。「古希」はもう20年経って使われるに相応しい言葉になりました。ぼくは確かに人生の終盤に差し掛かっています。そろそろ人生を整える時期になったとも思う事があります。

それでもまだまだ変わっていいこうとする意欲と希望を棄てたことは、一度たりともありません。いつも何かと出会うことをひそかに待っているのです。若い時代には経験しなかったことをこれからもきっとあると思って。何度も何度も脱皮してやっと本物の自分と出会うのかもしれません。しかしそれは自分ではどうなっていくのか分かりません。

若い人々に何かを分かち与えるものがあるとしたら、それはできるだけ多くの出会いをすることだと勧めておきたいのです。そしてその出会いから何かを学ぼうとする謙虚な姿勢を持ち続けることなのです。そうすれば必ず成長していく自分を見出すことができるのではないでしょうか。

小さくともどこかにキラリと光を放つ人であって欲しいと思います。あなたにスポットライトが当たって輝くのではなく、あなたが周囲に光を放つ人間になることをめざして。

阪崎健治朗HP http://www16.ocn.ne.jp/~com212/

■筆者プロフィール
阪崎 健治朗 SAKAZAKI KENJIROU
生年月日: 1935年(昭和10) 12月25日
学歴: 日本大学文理学部英文科(通信)卒業
職歴: 中学校教諭を経て、神戸・北九州・富山・日本YMCA同盟北海道の各YMCA勤務。その他、大学の講師として「集団組織論」、「基礎作業学レクリエーション演習」、「国際ボランティア論」、「国際関係論・国際交流論」等を担当。
社会活歴: 人間講座主宰(ロビンソンデパート)
研修歴: 感受性訓練(JICE)、交流分析(TAT)受講。
著作: 「職業と人間形成」(共著)(日本YMCA同盟出版)
「神戸とYMCA百年」(神戸YMCA)
「ボランティア論」(青葉書店)
「国債理解 重要基礎用語300」(共著)(明治図書)

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