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「五匹の猿を退治しろ!」に続き、この新シリーズは月1回でスタート致します。
軽妙洒脱な文体は、更に「うずまさ一刀流?」の鋭さを増し、すっと軽く読めるがズシリと心に響く。日々の暮らしに目を向け考え悩み前進する高校生、大学生、社会人のみなさんを暖かいまなざしで叱咤激励するシリーズです。ここには社会生活をする上でのさまざまな知恵がギッシリと埋まっています。お楽しみに。

犬の遠吠えねずみ鳴き

■巻の2「 やせ犬の遠吠え 」  うずまさ やすのり

太秦 康紀 ボクは亥年生まれである。早生まれなので、同級生は大半が戌年で、ボクは犬の中の猪だった。犬と言えば、以前ジローという名の中型の雑犬を飼っていたことがある。この犬は仕方のない犬で、ボクが勤めていた銀行の頭取の家の血統書つきの飼い犬に噛みついて、大いにボクを困らせたことがあった。「飼い犬に手を噛まれる」という諺があるが、飼い犬が上司の、それも一番偉い人の飼い犬に噛みついたのでは話にならない。

  そのジローは、消防自動車や救急車がサイレンを鳴らして通ると、必ず「ウォー、ウォー」ともの悲しげな声で遠吠えをした。昼夜を問わず吠え立てた。「やせ犬は吠える」という諺がある。「空っぽの能なし人間」がむやみに騒ぎ立てることをいう諺で、「能なし犬の高吠え」「能なし犬は昼吠える」などとも言う。

 以前ボクがいた中小企業では、何か困った問題が起きると、やたらに大勢の人間が集まってきて、「ワーワー」騒ぎ立てることがあった。騒いでいるだけで、一向に問題が解決しない。誰もいい知恵を出せず、さりとて「よし、俺が行って解決してこよう」という者もいない。まさに「能なし犬の高吠え」の図だった。臆病な弱い奴が、陰で相手の悪口を大声で言うことを「負け犬の遠吠え」と言う。これもしばしば見られる光景である。

 犬は猫とともにもっとも人間の身近にいる動物だけに、諺もいろいろ多い。「犬も歩けば棒に当たる」という諺を知らない人はいないだろう。これは犬もうろうろするから棒で打たれるということで、余計なことをするから災いに会うという教えであったが、最近は反対に意外な幸運に出会うことに使われているようだ。諺も時代によって解釈が変わってくるようである。

 日本人がほとんど知っている犬と言えば忠犬ハチ公だろう。比較的最近映画にもなったから、若い人でも知っているのではないだろうか。渋谷駅には銅像も建っており、恋人同士の待ち合わせの場所になっている。大正時代、東京帝大の上野教授が秋田犬を飼っていた。名前をハチ公といった。ハチ公は毎朝教授を渋谷駅まで送って行き、夕方になると出迎えに行っていた。教授の死後も、ハチ公は毎日渋谷駅まで迎えに行き、人々の涙を誘ったという話である。「犬は3日飼えば人の恩を忘れず」という諺の通りなのである。そこへ行くと、猫の評判は悪くて「猫は3年飼っても恩を忘れる」などと言われる。ボクは猫好きだから、猫のために弁護してやりたいが、それは別の機会に譲ろう。

 日本人の男性は、この犬型タイプが好きだった。上の人の命令に忠実に従うタイプである。ゴチャゴチャと自分の意見を主張するタイプは、協調性がないと嫌われた。会社などでは特にそうで、たとえ間違っていると思っても、黙って上司の指示に従うことが良しとされた。その指示が法に背くものであっても黙って従う。だがその結果、会社が大変なことになることがある。最近不祥事で世間の袋叩きにあい、会社のトップが薄くなった頭を下げている場面がやたらに多い。「尾を振る犬は可愛い」「尾を振る犬は叩かれず」というが、忠犬ハチ公ばかりを評価すると、こういうことになるのだ。頭を下げて済むうちはまだいい。下手をすると逮捕されて、何十年もかかって得た地位も名誉も失う羽目になる事態も、新聞やテレビで見聞きするところだ。人の意見を聞く耳を持たないと、結局わが身に跳ね返ってくるのだ。

 上意下達(上位の者の考え、命令を下位の者に徹底させること)の重んじられる社会では、とかくコミュニケーションが軽視される。日本の会社は年功序列社会だったから、正に上意下達の社会だった。上の者が「俺の言うことが聞けないのか」と迫る社会だった。そこではコミュニケーションは育たず、命令と服従があるだけである。そういう社会で育ってきただけに、日本人は一般にコミュニケーションが下手くそである。議論をしても、お互いに自分の主張を声高に述べ立てるばかりで、議論にならないことが多い。ではどうすればコミュニケーションが上手になるかということだが、これについては追々お話しして行くことにしよう。いずれにしろ、忠犬ハチ公ばかり可愛がっているようでは、これからの国際化社会に生残って行くのは容易ではないと思う。

 さて、犬の話はこれくらいにして、我が猪であるが、どういうわけか猪に関する諺はほとんどない。わずかに「猪突猛進」「猪武者」という言葉があるくらいだ。向こう見ずに、突っ走って行くしか能がないのだろうか。ところでボクであるが、一見思慮深そうに見えて、結構突っ走るところがあるのは、やはり猪なのかもしれない。少なくとも、忠犬ハチ公でないことだけは間違いないな。


▼ お知らせ ▼

筆者:太秦康紀さんは、昨年11月に3冊目となる本を出版しました。新風舎文庫「さらりー漫歩」。全国の書店で発売中です。
サラリーマンの喜び悩み、そして生きてゆく知恵と勇気、行動をユーモラスに鋭く描いております。ご自身の体験が底流に流れていますので、一種のドキュメンタリー作品としての側面も持っています。
札幌紀伊国屋書店の「話題の本」「新刊本」のコーナーに置かれています。またHBCラジオや読売新聞などですでに紹介されておりますので、一度手にとってご覧下さい。

「さらりー漫歩」著者::太秦康紀さん
「さらりー漫歩」
定価700円
(新風舎文庫)


太秦康紀HP http://www.rak3.jp/home/user/monkey69/


■筆者プロフィール
太秦 康紀 UZUMASA YASUNORI
1935年02月: サッポロで生まれる。
1958年03月: 北大法学部を卒業、4月に北海道銀行へ入行。
約28年間の銀行員生活を経て、1985年11月同行退職。
1985年11月: 医薬品問屋、(株)寿原薬粧の社長に就任。
1991年04月: 同業7社の合併によって誕生した(株)バレオの副社長に就任。
1996年06月: 同社常勤監査役に就任。
1999年04月: 再度の合併で社名は(株)ほくやくとなり、引き続き監査役。
2000年06月: (株)ほくやく監査役を退任。
2000年08月: 太秦事務所を設立、所長となる(経営コンサルタントを自称)

著作: ・しなやか散歩道(1995年2月 近代文芸社)
・しなやかれすとらん(2003年4月 北海道新聞社出版局)
・北海道新聞「朝の食卓」1998〜99年執筆
・さらりー漫歩(2005年11月 新風舎文庫)
その他: 家庭裁判所家事調停委員、(株)スハラ食品監査役
(株)芭里絵監査役などを勤めた。現在はTVコメンテーター、FMパーソナリティ、講演、文筆など気ままに活動中。
血液型 AB型、星座 うお座(たまにみずがめ座)、動物占いでは落ち着きのない猿。趣味は、映画鑑賞 格闘技鑑賞 ゴルフなど

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