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「五匹の猿を退治しろ!」に続き、この新シリーズは月1回でスタート致します。
軽妙洒脱な文体は、更に「うずまさ一刀流?」の鋭さを増し、すっと軽く読めるがズシリと心に響く。日々の暮らしに目を向け考え悩み前進する高校生、大学生、社会人のみなさんを暖かいまなざしで叱咤激励するシリーズです。ここには社会生活をする上でのさまざまな知恵がギッシリと埋まっています。お楽しみに。

犬の遠吠えねずみ鳴き

■巻の4「 鳴き猫にはなるな 」  うずまさ やすのり

太秦 康紀「ねずみ鳴きってなんですか」、このコラムを読んだ人から聞かれることがある。「ねずみ鳴き」とは、文字通りねずみの鳴くことだが、人が口をすぼめて「チュウ」とねずみの真似をして出す声もねずみ鳴きと言う。昔の遊女が客を呼び入れようとするときに、ねずみ鳴きをしたと言われており、あるいは逢引の際男性が女性に合図するのに使ったとも伝えられる。
 コンタックスという高級カメラがある。現在は京セラが製造、販売しているが、元はドイツのツァイス・イコン社のカメラだった。このコンタックスの低速シャッターの音が、ねずみの鳴き声に似ているところから、「コンタックスのねずみ鳴き」という言葉があったらしい。第二次世界大戦後、ソ連がコンタックスの工場を吸収して、コンタックスとそっくりのコピーカメラ「キエフ4」というのを作った。コピーだけに、このキエフ4のシャッター音もやっぱりねずみ鳴きするそうである。

 猫と遊んでやろうと思って、ねずみ鳴きをしてみる。猫がねずみと間違えて興奮するかと思うと、そんなことはない。猫は人間が真似をしていることを先刻ご承知で、それでも多少は反応してやらないと人間が気の毒だと思うのか、寝ていた首をもたげてちらっと見るが、すぐ元通り寝てしまうのである。
 トムとジェリーがいつもやっているが、猫はねずみを見ると追いかける。これは何故かというと多分ご存知だろうが、十二支と関係があるのだ。神様が十二支を決める時、動物が家に来た順番に決めることにした。牛は元来動作がスローモーなので、一番になるために早くから来て門の前で待っていた。神様が門を開けた時、入ろうとした牛の頭に乗っていたねずみが一足先に飛び込んで一番になり、牛は二番目になってしまったという。さて猫も十二支に入れてもらおうと思って準備をしていたのだが、ねずみが集合日をわざと間違えて教えたので、猫は十二支の仲間入りが出来なかった。怒り狂った猫は、以後ねずみを見ると追いかけるようになったのだが、トムとジェリーはそれを知っているだろうか。

 猫はペットとして、もっとも人間の身近な動物であるから、十二支に入っていないのは確かにおかしいような気がする。以前、このエッセイの巻の2で「猫は3年飼っても恩を忘れる」という諺を紹介した。猫は犬と違ってマイペースでクールな動物だから、しばしば誤解されがちなのである。その証拠に「犬猫も三日飼えば恩を忘れず」という、猫だって犬並みだという諺もあるのだが、この諺はほとんど知られていない。猫にとっては気の毒である。

「ねずみ鳴き」ならぬ「鳴き猫は鼠をとらぬ」という諺がある。口先ばかり達者で実行力に欠けることを言う。いわゆる評論家タイプだ。こういう人が幅を利かす組織は要注意である。会議になると得々として喋るので、皆すごい人だと思ってしまうが、実際はさっぱり実行力がないのだ。だからこういう人は、自分の担当外のことになると途端に元気になって、「あそこが駄目だ、ここを改善すべきだ」などと喋りまくるのである。自分でやらされる心配がないからだ。試しにその人を、批判していた部署に配置換えしてみると、急に貝になってしまう。もちろん成績を上げることも出来ない。ところがこういう人は、上の人には決して逆らわない。逆らわないどころか、「ごもっとも、素晴らしい」と褒めたたえるから、偉い人の受けはいいのである。弁は立つゴマはするで、あいつは見所があるなどということになり、出世したりするのである。「鳴き猫」を見破れない上の者も大したことがないわけだから、こういう会社も大したことにはならないのである。

 読者の皆さんも「鳴き猫」になってはいけない。ものを言うなら、自分が出来ることを言おう。「それなら君やってみろ」と言われたら、「任せてください」とやり遂げられることを言おう。そのためには自分というものを、しっかり自分で把握していなければならない。これからは実力主義、能力主義の時代だから、自分を知るということがとても大事になると思う。
 人間には、自分も他人も知っている自分、他人は知らないが自分だけが知っている自分、自分は知らないが他人は知っている自分、自分も他人も知らない未知の自分という4人の自分がいるという説がある。自分を客観的に知るということは、簡単なことではないのだ。常日頃から、自分を知る訓練を重ねて行くことが大切である。自分を知って、自分に自信を持つ、そして自信を持ってものを言う。出来ないことは言わない。そんな風になってほしいと思う。評論家にはなってほしくない。
「猫の前の鼠」という諺がある。「蛇に睨まれた蛙」と同じで、猫に出会った鼠のように、ちぢみ上がって逃げることも向かっていくことも出来ない状態を言う。まあ絶体絶命の状態だ。出来もしないことを喋って、そういうことにならないようにしていただきたいのである。


▼ お知らせ ▼

筆者:太秦康紀さんは、昨年11月に3冊目となる本を出版しました。新風舎文庫「さらりー漫歩」。全国の書店で発売中です。
サラリーマンの喜び悩み、そして生きてゆく知恵と勇気、行動をユーモラスに鋭く描いております。ご自身の体験が底流に流れていますので、一種のドキュメンタリー作品としての側面も持っています。
札幌紀伊国屋書店の「話題の本」「新刊本」のコーナーに置かれています。またHBCラジオや読売新聞などですでに紹介されておりますので、一度手にとってご覧下さい。

「さらりー漫歩」著者::太秦康紀さん
「さらりー漫歩」
定価700円
(新風舎文庫)


太秦康紀HP http://www.rak3.jp/home/user/monkey69/


■筆者プロフィール
太秦 康紀 UZUMASA YASUNORI
1935年02月: サッポロで生まれる。
1958年03月: 北大法学部を卒業、4月に北海道銀行へ入行。
約28年間の銀行員生活を経て、1985年11月同行退職。
1985年11月: 医薬品問屋、(株)寿原薬粧の社長に就任。
1991年04月: 同業7社の合併によって誕生した(株)バレオの副社長に就任。
1996年06月: 同社常勤監査役に就任。
1999年04月: 再度の合併で社名は(株)ほくやくとなり、引き続き監査役。
2000年06月: (株)ほくやく監査役を退任。
2000年08月: 太秦事務所を設立、所長となる(経営コンサルタントを自称)

著作: ・しなやか散歩道(1995年2月 近代文芸社)
・しなやかれすとらん(2003年4月 北海道新聞社出版局)
・北海道新聞「朝の食卓」1998〜99年執筆
・さらりー漫歩(2005年11月 新風舎文庫)
その他: 家庭裁判所家事調停委員、(株)スハラ食品監査役
(株)芭里絵監査役などを勤めた。現在はTVコメンテーター、FMパーソナリティ、講演、文筆など気ままに活動中。
血液型 AB型、星座 うお座(たまにみずがめ座)、動物占いでは落ち着きのない猿。趣味は、映画鑑賞 格闘技鑑賞 ゴルフなど

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