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「五匹の猿を退治しろ!」「犬の遠吠えねずみ鳴き」に続いて、新シリーズいよいよ連載スタートです。肩の力を抜いてすっと読めるがズシリと心に響く「うずまさワールド」がますます冴えわたる。筆者、太秦さんの暖かく、そして厳しく叱咤激励する気持ちから紡ぎだされる言葉のひとつひとつが、読者のみなさんの「自己との対話」に結びつくことを願っております。悩みながらもしっかりと前進する高校生、大学生、社会人のみなさんにとって新シリーズが“明日をいきいきと暮らす”糧になればと念じております。ここには、生きて行くさまざまな知恵と勇気が詰まっています。隔月掲載の6回シリーズ、どうぞお楽しみに。

夢・希望へのあくなき挑戦 スクリーンは見ている

■5.アース!大自然が告げる警告!       うずまさ やすのり

太秦 康紀

北極にも春が来る。真っ白な雪の穴からひょっこり白熊の頭が現われる。鼻を突き出して地上の匂いを嗅いだ白熊は、どっこいしょと地上に這い出し、雪の傾斜をずるずると滑り下りる。その後から白い小さな頭が二つ、白熊の赤ちゃんだ。おぼつかない足取りでお母さん熊の後を追う赤ちゃん白熊、餌のアザラシを求めて雪上を行くお母さんの後をチョコチョコとついて行くのだ。

氷の上には餌を探す雄の白熊がいる。餌となるアザラシを獲るには、海に浮かぶ氷がなければならない。だが照りつける太陽により、氷の溶ける時期が少しずつ早まっている。温暖化のせいである。溶け出した氷は雄熊の体重を支えられない。泳ぎの上手い白熊も、水の中ばかりではいつか溺れてしまう。温暖化でこれ以上氷が溶けだすと、白熊は食糧を確保できず生息できなくなってしまうのだ。

今から50万年前、巨大な隕石の衝突によって地軸が23.5度傾いた地球は、それによって生物の生存に最も適した「生命の星」になった。その地球で繰り広げられる命のドラマが映画「アース」だ。「生命の星」とは言え、動物たちが生きていくためには餌や水を求めての過酷な長旅と、生存競争が待ち受けている。さまざまな動物たちが、水と緑と餌を求めて大移動を続ける。世界最高峰のヒマラヤの更に上を飛んでいく鶴、水牛や象の大群の大移動、そんな動物たちを餌として狙う猛獣たち。狙われるのはいつも弱い子供たちだ。子象を狙うライオンの群れ、セイウチの子供を狙う白熊、鯨の子を狙うシャチ、ホオジロザメ、子供を守る親たちと猛獣との間に展開される迫力に満ちた弱肉強食の死闘。だが狩に失敗した場合は、猛獣にも餓死という厳しい現実が待っているのだ。動物たちの壮大な命のドラマ、自然界の厳しい掟が、ときには見るものの目を背けさせる。だが本当に怖いのは弱肉強食の世界ではない。生態系を狂わせ、動物の本能をも狂わせて生存の場を失わせていく地球温暖化という魔物だ。その魔物を生み出し、さらに大きくしていく元凶こそ、人間にほかならないのである。「生命の星」が、今揺らぎだしている。

自然界のドキュメントは、これまでにもずいぶん見てきた。その都度「すごいなー」と驚いたり感動してきた。だが今回圧倒的な迫力の映像が見るものにぶつけてきた大自然の掟と、その中で必死に生きていく動物たちの生態は、改めて大きな感動と同時に大きな問題をも投げかけてきたように思える。

まだ羽毛が生えていない小さな羽を広げて、巣から飛び降りてくる鴛鴦の雛。下では母鳥が「早くおいで」とせきたてる。何度も躊躇したあげく、やっと飛び降りてきた雛は飛んだというよりも落ちてきたという感じ。下は積み重なった落ち葉のマットだからいいようなものの、この後どうやって高いところにある巣に戻るのかとボクは心配になってくる。実際どうなのだろう?もう戻らないのかしら?

子供の象は鼻でお母さん象の尻尾を握り、大移動の旅に出る。人間で言えば幼稚園児ぐらいの子象に長旅は過酷だ。ときどき疲れて遅れそうになりながらトボトボ歩く子象。回りには餌を求めるライオンの群れが虎視眈々と子象を狙っている。子供を一生懸命育て、外敵から必死に守ろうとするのはどの動物も同じだ。幼い子供たちを群れの中に囲み、猛獣の攻撃から守る大人たち。これは動物たちの本能なのだろうが、これに比べて子供の虐待が日常茶飯事となってきた人間社会は一体何なのだろうかと考えてしまう。仲間同士が助け合い、子供を育て、守るという生き物として基本的なことすら出来なくなりつつある人間は、動物以下と言うしかないのだろうか。

暗闇に目を光らせるライオンの群れの弩迫力。弱肉強食は動物の世界にとってはやむを得ないというか、当然もしくは必然のものである。猛獣だって生きていかなければならないのだから。そして子供を育てなければならないのだから。だが彼らは腹が満ちていれば餌になる動物が目の前にいても平気で寝そべっている。猛獣の殺気の有無が草食動物たちにも分かるのか、餌として襲われる側の動物たちも寝そべるライオンの傍では平気で草を食べているようだ。つまり動物の世界では不必要な殺傷はしないものらしい。

翻って人間社会を見れば、毎日のように余った食物や勝手に決めた賞味期限切れとやらの食物を大量に捨てている日本人、血の滴るようなビーフステーキを食いながら鯨を守れと叫んでいる西洋人など、動物たちから見れば人間とは何と変な生き物なのかと思うだろう。

地球温暖化という言葉を聞いて、「大変だなー、今にえらいことになるのかなー」などと漠然と思う人が多いのではないだろうか。北極の氷が溶け出して、海水の水位がだんだん上がってくるなどということを聞いて、いつの日か地球が水没する日がくるのかも知れないとも思う。だがそんなことは未だずっとずっと先のこと、我々がとうに死んでからの話だと思う。だが北極の氷が溶けだして、30年後には白熊が絶滅すると聞けば、地球温暖化問題は俄かに現実味を帯びてこざるを得ない。この「生命の星」を壊し始めている元凶が人類だという事実、だがその前に人類自身が壊れ始めているのではないかという不安、映画、アースはそんな疑問をスクリーンから投げかけているようである。


▼ お知らせ ▼

筆者:太秦康紀さんは、平成17年11月に3冊目となる本を出版しました。新風舎文庫「さらりー漫歩」。全国の書店で発売中です。
サラリーマンの喜び悩み、そして生きてゆく知恵と勇気、行動をユーモラスに鋭く描いております。ご自身の体験が底流に流れていますので、一種のドキュメンタリー作品としての側面も持っています。
札幌紀伊国屋書店の「話題の本」「新刊本」のコーナーに置かれています。またHBCラジオや読売新聞などですでに紹介されておりますので、一度手にとってご覧下さい。

「さらりー漫歩」著者::太秦康紀さん
「さらりー漫歩」
定価700円
(新風舎文庫)

太秦康紀HP http://www.rak3.jp/home/user/monkey69/

■筆者プロフィール
太秦 康紀 UZUMASA YASUNORI
1935年02月: サッポロで生まれる。
1958年03月: 北大法学部を卒業、4月に北海道銀行へ入行。
約28年間の銀行員生活を経て、1985年11月同行退職。
1985年11月: 医薬品問屋、(株)寿原薬粧の社長に就任。
1991年04月: 同業7社の合併によって誕生した(株)バレオの副社長に就任。
1996年06月: 同社常勤監査役に就任。
1999年04月: 再度の合併で社名は(株)ほくやくとなり、引き続き監査役。
2000年06月: (株)ほくやく監査役を退任。
2000年08月: 太秦事務所を設立、所長となる(経営コンサルタントを自称)

著作: ・しなやか散歩道(1995年2月 近代文芸社)
・しなやかれすとらん(2003年4月 北海道新聞社出版局)
・北海道新聞「朝の食卓」1998〜99年執筆
・さらりー漫歩(2005年11月 新風舎文庫)
その他: 家庭裁判所家事調停委員、(株)スハラ食品監査役
(株)芭里絵監査役などを勤めた。現在はTVコメンテーター、FMパーソナリティ、講演、文筆など気ままに活動中。
血液型 AB型、星座 うお座(たまにみずがめ座)、動物占いでは落ち着きのない猿。趣味は、映画鑑賞 格闘技鑑賞 ゴルフなど

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