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「五匹の猿を退治しろ!」「犬の遠吠えねずみ鳴き」に続いて、新シリーズいよいよ連載スタートです。肩の力を抜いてすっと読めるがズシリと心に響く「うずまさワールド」がますます冴えわたる。筆者、太秦さんの暖かく、そして厳しく叱咤激励する気持ちから紡ぎだされる言葉のひとつひとつが、読者のみなさんの「自己との対話」に結びつくことを願っております。悩みながらもしっかりと前進する高校生、大学生、社会人のみなさんにとって新シリーズが“明日をいきいきと暮らす”糧になればと念じております。ここには、生きて行くさまざまな知恵と勇気が詰まっています。隔月掲載の6回シリーズ、どうぞお楽しみに。

夢・希望へのあくなき挑戦 スクリーンは見ている

■6.最高の人生を目指して          うずまさ やすのり

太秦 康紀

余命後6ヶ月を宣告されたら、君は、貴女はどうするか。
「まだ若いんだから、そんなこと関係ないよ」と答えるかな?

確かにそうかもしれない。だがボクらのような高齢者ともなれば、これは身近な問題だけにそうも言ってはいられないことだ。

病院で偶然同室になった二人の初老の男が、「どうせ6ヶ月しか余命がないのなら、やりたかったことをやろうじゃないか」と意気投合し実現に向かって走り出したのが、映画「最高の人生の見つけ方」だ。主人公の二人(ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン)が棺おけに入る前にやりたい、見たい、体験したいと思ったことを書き抜いた「棺おけリスト」の内容は何だっただろうか。
「荘厳な景色を見る」「見ず知らずの人に親切にする」「ムスタングの運転」「泣くほど笑う」「スカイダイビング」「ライオン狩りをする」「世界一の美女にキスをする」・・・・・など、などそれは沢山の項目になった。

そんなことを言ったって出来ることと出来ないことがあるだろうと思うのは素人考え。一方のカーター(モーガン・フリーマン)は、油にまみれて仕事一筋に生きてきたしがない自動車修理工だったが、もう一方のエドワード(ジャック・ニコルソン)は大富豪、お金は有り余っているのだった。そして病院を飛び出した二人は、あるときはタージマハールへ飛び、またあるときは野生の楽園セレンゲティを訪れ、あるいは香港の素晴らしい夜景を楽しむ。もちろんスカイダイビングは真っ先に挑戦、最高級のレストランで食事を楽しんだかと思えば、怪しげな店でタトゥーを掘るなど、片端から「棺おけメモ」の中身を片付けて行く。

余命6ヶ月の宣告という深刻な映画かと思いきや、何とこれは大人の楽しいファンタジーの物語であった。しかしあれこれメニューをこなしていく中に、ふと我に返ったとき、カーターは俄かに家族の顔が見たくなる。そして久々に家族全員に囲まれた夕食こそが、彼にとって最高の喜びであったと改めて気付くのだった。一方エドワードはあるトラブルから長年関係の途絶えていた娘との再会を果たし、可愛い孫娘にキスをすることが出来た。これこそエドワードにとっての「世界一の美女へのキス」であった。

もしも諸君が初老の男女だったとして、余命6ヶ月の宣告を受け、やりたかったこと、やってみたいことを書き抜くとしたら、それはどんな内容になるだろうか。とてもそんな仮定の質問には答えられないという人も多いだろう。「はてな」と頭を捻る人も多いだろう。だが何といっても諸君はまだ人生の途上にいるのだから、その質問自体が無理なものかもしれない。むしろ余命云々はちょっと脇へ置いておいて、これから皆さんがやりたいこと、やってみたいことは何ですかと聞いた方が現実的な質問かもしれない。これなら正に千差万別、数え切れないほどの答えが出てくるだろう。もちろんこれ等は「棺おけリスト」どころか、「今後の人生リスト」になるわけだ。読者の皆さんはまだ若くて、無限の可能性を秘めているわけだから、精一杯頑張り、それに多少の幸運が味方すれば、「荘厳な景色を見ること」も「ムスタングを運転すること」も、あるいは「世界一の美女にキスすること」だって実現できるかもしれない。それはボクら高齢者が、地団駄踏んでも真似の出来ない若さの特権である。

では翻ってボク自身が、余命6ヶ月を宣告されて、「棺おけリスト」を作成するとしたらどうだろうか。これは現実にあり得ることだから、真剣に考えてみるべきことかもしれない。振り返ってみると、今までにボクはかなりやりたかったことを実現させることが出来た。会社の社長をやってみたいと思っていたら、どういう会社かはともかく社長になれた。大学の教壇に立ってみたいと思っていたら、講演会のようなものだが一応非常勤講師として大学の教壇に立ち、300人ぐらいの学生を前に一度ならず話をすることが出来た。本を出したいと思っていたら、ちっとも売れはしなかったが、何冊も本を出せた。テレビに出てみたいと思っていたら、ゲストコメンテーターとして何回も出る機会がやってきた。ラジオにも出てみたいと思ったら、FM放送局からディスクジョッキーの依頼が来て、1年ぐらいレギュラーの番組を持てた。このように、やってみたいことが次々実現できて、ボクは大変な幸運に恵まれていたと思うのだ。

まだヨーロッパ旅行の経験がないので、出来れば1度行ってみたいとは思うが、海外旅行は高齢者にはかなり疲れるので、余命6ヶ月では無理だろう。ただ「棺おけリスト」に書き込むことがそんなにないということは、ボクの人生がそれだけ充実しており、恵まれたものだったということにもなる。とても有難いことだ。

諸君も今はまだ若いといっても、人生には必ず終わりがあるのだ。やりたいことは、今の中にどんどん実現していくべきだ。直ぐに実現出来なくても、願望をいつも抱き続けることは極めて大切なことだと思う。ボクの経験から言えば、願望は抱き続ければいつか必ず実現するものだからである。
「最高の人生の見つけ方」の主人公たちは、いろいろやりたいことを人生の最後にやった挙句、肉親との触れあいの中でこの世を去って行く。そのことに涙して映画館を出たボクだったが、若い読者の皆さんには、「やりたい夢を早いうちに実現しなさい、そのためには夢、願望をいつか実現するぞと常に抱き続けなさい、そして充実した人生を歩んでください」と重ねて申し上げて、このシリーズを終えることとしたい。ご愛読多謝。 (完)

■編集者より
早いもので筆者太秦さんの今シリーズはアッという間に最終回を迎えました。多くの映画ファンが批評の視点でスクリーンを楽しむ傾向が強い中、生き方や考え方、モノの見方をスクリーンの中に考えてみることをテーマにした今回は、いわばスクリーンの奥から見られている“あなた自身”が主役なのです。何度でもシリーズ全体を読み返していただけると、より深いところで“明るい可能性”を見出すことがきっとできます。またこれを機会に太秦さんのこれまでの全シリーズを読み直して見ることをお勧めします。繰り返し読むことで、少しずつ前向きな考え方に変わっていく「あなた自身」を発見することでしょう。最後に、多くの読者の皆さんと筆者太秦康紀さんには心からの感謝とお礼を申し上げます。ありがとうございました。尚、検討中の次回シリーズが始まりましたら又どうぞお付き合いください。


▼ お知らせ ▼

筆者:太秦康紀さんは、平成17年11月に3冊目となる本を出版しました。新風舎文庫「さらりー漫歩」。全国の書店で発売中です。
サラリーマンの喜び悩み、そして生きてゆく知恵と勇気、行動をユーモラスに鋭く描いております。ご自身の体験が底流に流れていますので、一種のドキュメンタリー作品としての側面も持っています。
札幌紀伊国屋書店の「話題の本」「新刊本」のコーナーに置かれています。またHBCラジオや読売新聞などですでに紹介されておりますので、一度手にとってご覧下さい。

「さらりー漫歩」著者::太秦康紀さん
「さらりー漫歩」
定価700円
(新風舎文庫)

太秦康紀HP http://www.rak3.jp/home/user/monkey69/

■筆者プロフィール
太秦 康紀 UZUMASA YASUNORI
1935年02月: サッポロで生まれる。
1958年03月: 北大法学部を卒業、4月に北海道銀行へ入行。
約28年間の銀行員生活を経て、1985年11月同行退職。
1985年11月: 医薬品問屋、(株)寿原薬粧の社長に就任。
1991年04月: 同業7社の合併によって誕生した(株)バレオの副社長に就任。
1996年06月: 同社常勤監査役に就任。
1999年04月: 再度の合併で社名は(株)ほくやくとなり、引き続き監査役。
2000年06月: (株)ほくやく監査役を退任。
2000年08月: 太秦事務所を設立、所長となる(経営コンサルタントを自称)

著作: ・しなやか散歩道(1995年2月 近代文芸社)
・しなやかれすとらん(2003年4月 北海道新聞社出版局)
・北海道新聞「朝の食卓」1998〜99年執筆
・さらりー漫歩(2005年11月 新風舎文庫)
その他: 家庭裁判所家事調停委員、(株)スハラ食品監査役
(株)芭里絵監査役などを勤めた。現在はTVコメンテーター、FMパーソナリティ、講演、文筆など気ままに活動中。
血液型 AB型、星座 うお座(たまにみずがめ座)、動物占いでは落ち着きのない猿。趣味は、映画鑑賞 格闘技鑑賞 ゴルフなど

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